朝の通勤電車は下りで、世の中のおおきな流れとは逆なのでわりかし余裕がある。乗り換えのあとの電車は一本やり過ごせばほぼ確実に座れる。乗車時間は9分。そのすこし小さめの車内で毎日本を読む。こないだ、右どなりに座ったおじさんが文庫本を読みはじめたのでおっと思った。そのうち空いていた左どなりに若者がやってきたなと思っていたら、鞄をさぐって本を取り出し、読みはじめた。こころの中でビンゴカードに穴をあけた。うれしくってその日は妙にウキウキした。
- 作者: 津村 記久子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 文庫
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オケタニアザミは高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。勉強は追試や補習の連続で、進路は何一つ決まらない。そんな日々を支えるのは、パンクロックだった! ぐだぐだキュートな青春小説。
取り返しのつかなくなってしまったかつての日々に気づいた人にはとてもせつない物語。なにものになりたいのかわからないで、なにものかにならなければならないイラだち。あのころ脱ぎすてたくてたまらなかった自分はどこまでもどこまでもついてきて、取り戻せない時間のぶんだけ老けてここにいる。