フクちゃんは石ころが好きで、いっときは毎日道ばたで拾ったのを持ち帰ったので、玄関のわきで賽の河原のように石が山積みになっている。このごろはあまりお持ち帰りはなかったけれど、久しぶりに琴線にふれる石を見つけたらしく、うれしそうに拾った石を見せてきた。お迎えにセイちゃんを呼びにいくときに、ここでまってる、と児童クラブの庭先でいう、どうしたの、ときくと、いしをみてたい、じっとみてるとどきどきする、という。フクちゃんにはトリケラトプスに見えるらしい。トリケラトプスはふしぎないしと名づけられ玄関先のコレクションの新顔となった。
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 小説・エッセイ > 日本の小説 > その他
- ショップ: bookfan 2号店 楽天市場店
- 価格: 1,512円
「馬鹿野郎、てめえの股ぐらの方がよっぽど臭せえわ!」「今度はそのイカモノ食いの先輩とやらとハメまくってろい」 夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々-。エンタメ私小説4編収録。
貧窶の沼 p5-43
春は青いバスに乗って p45-104
潰走 p105-139
腋臭風呂 p141-163
梅雨どきにぴったりなほどじっとりと自意識をまとわりつかせているダメ男の私小説で、いらいらしながら読んだ。このイライラになぜかエンタメ性があり、妙なところで繊細だったり、ボクっ子(一人称が僕)だったりして、奇妙なバランスがおもしろい。東京じゅうにゆけぬ町を作ってほしい。