まみ めも

つむじまがりといわれます

無人島のふたり

すこし遠出して帰りが遅くなった。朝からつめたい雨に降られてくたびれて、朝用意したアイスコーヒーは飲む気にならんまま鞄の中にある。行きの電車では太宰治を読んだけど、やたら癇にさわって、もう本もひらきたくないし、電車の席に座って音楽をイヤフォンで流しはじめたら、すきな歌声に調子はずれのハミングがまじって、顔をあげたら、むかいの窓にうつる隣のおじさんが、ほろ酔い加減でリズムをとっている。しかたないなと諦めて音量をさげてなにを歌っているのか確かめようとおもったらすっと席を立っておりてった。ボタンのかけ違いのような一日だ。音量をあげてシャーデーをきく。

ト。

ある日突然がんと診断され、夫とふたり、無人島に流されてしまったかのような日々が始まった。58歳で余命宣告を受け、それでも最期まで書くことを手放さなかった作家の闘病記。

死ぬときはひとりだし、死ぬぎりぎりまで生きるんだよな、ということを改めて思う。ちゃんと死ねますようにと心配するところにとても共感してしまった。ちゃんともなにも、死ぬのだけれど、できればちゃんと死にたい。