まみ めも

つむじまがりといわれます

エッグマン

ふーちゃんはこのごろ甘えんぼうで、ふだんはおかあちゃんと呼ぶくせに、甘えるときはまんま、まんまと呼んで泣いてばかりいる。毎日帰り道の途中で石ころをひろいポケットにつめるので、ふくちゃんが拾う石と混ざり、玄関先に石がどんどん増えていく。フランスの郵便配達夫が、毎日石をひろって帰り、幾星霜かけてたいそうな家をこしらえた話をしたら、ふくちゃんの食いつきがすごかった。シュヴァルの理想郷には、たしかに夢があるよなあ。

エッグマン

エッグマン

ト。

オムライス、親子丼、ティラミス、エッグベネディクト…。風変わりな元料理人の作る1品が、食欲とこころを満たしていく。すべての人々に幸せを届ける至福の料理小説。『小説トリッパー』掲載を単行本化。
TKGホワイトオムライス p5-34 
他人の親子丼 p35-80 
奇跡のティラミス p81-108 
エッグマンの卵焼き p109-139 
二人でわけあうエッグベネディクト p141-170 
タマゴサンドの差し入れ p171-199 
サトジの涙 p201-227 
ウフとマヨに捧げる p229-253 

「やっと会えたね」のエピソードのインパクトがあまりに強すぎる辻仁成だけれども、「辻家の卵焼き」のレシピはなかなかよくて、来客のときなんかに作ったりする。この本は料理だけは得意な不器用な男が、恋しいシングルマザーと娘のために卵料理をふるまう話。しょっぱなからTGKときて鼻白みかけながら、卵が好きなので俄然レシピは前のめりで熟読し、志ん蔵のことしのお誕生日のオムライスはTGKホワイトオムライスにしてやった。卵の黄身だけでたまごかけごはんにして、白身を焼いて上からかける。本当は中に煮卵をいれるけど、省略した。たまごかけごはんの味付けはマヨネーズにがんものだし。たまごかけごはんが好きなので飲むようにずるずると食べてしまった。辻仁成は小説にしてもエッセイにしても、ものすごいピュアネスが伝わってくるので、いけすかない感はありつつも、これはこれですごいことだと思う。