まみ めも

つむじまがりといわれます

えーえんとくちから

退院の二日後におかあさんが来て、家のこまごまとした仕事を片付けてくれている。庭の草取り、シーツの洗濯、掃除機、炊事、買い出し。きょうは小学校がお弁当給食で、おかあさんにお弁当作りをまかせて、こちらは七時までぐーぐー寝た。おかあさんのお弁当がうらやましくなり、わたしもおねだりをしてお弁当箱に詰めてもらう。さつまいもの豚肉巻き揚げ、人参のグラッセ、玉子焼き、枝豆にプチトマト。おかあさんの玉子焼きは几帳面に黄色が均一に巻いてある。こどもたちにはフルーツもはいり、おにぎりは全体に海苔を巻いてまっくろなかたまりがふたつ。このばくだんみたいなまっくろいおにぎりを見ると、おかあさんのおにぎりだなあとなつかしく胸がキュンとする。おかあさんのお弁当をこれからあと何回食べられるだろうかということを考えてしまう。もったいなくて写真を撮った。

えーえんとくちから (ちくま文庫)

えーえんとくちから (ちくま文庫)

 

ト。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい

2009年、26歳でこの世を去った歌人・笹井宏之。鋭敏で繊細なまなざしから生まれた、やさしくつよい言葉が詰まった作品集。未発表原稿を加えて文庫化。

透きとおったことばで編まれた切実な短歌たち。ていねいにすくい取られた瞬間の凝縮した三十一文字は、えーえんとくちからがもたらしたものなのかもしれず。

葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある