まみ めも

つむじまがりといわれます

追憶

退院してみたら庭先の紫陽花がいい感じに白さを増して、初夏の日差しを浴びて光っている。遊歩道のびわもオレンジが濃くなった。

退院の日は、家についてすぐに哺乳瓶の消毒と米を炊き、お昼はレトルトのカレー。夜はポテトサラダや焼きそばを作って、あけて月曜はオムライス。小さくうまれたばびはまだ上手におっぱいが吸えないで、いやいやして泣く。哺乳瓶のミルクもちうちう吸うのでものすごく時間がかかり、ヤクルトにも満たない量のミルクを小一時間かけて吸っている。その音を聞きながらソファにもたれて白目をむいている。きのうから母が手伝いにかけつけてくれ、おそ昼でいなり寿司やかにめし、夜は焼き鳥。おなかの調子がしんどくて、三時間も四時間もトイレにこもる羽目になり、尋常でない量の冷や汗をかいた。日付が変わるころにやっとなんとかなり、気絶するようにこま切れの眠りに落ちた。寝起きの顔がずいぶんくたびれている。

追憶 (字幕版)

追憶 (字幕版)

 

プ。

第2次世界大戦以前からおよそ20年の激動の時代を生きた男女の愛の姿を描いた名匠シドニー・ポラック監督の社会派ラブ・ストーリー。1937年、大学のキャンパスで政治活動に熱中するケイティ(バーブラ・ストライサンド)とノンポリのハベル(ロバート・レッドフォード)は出会い、互いの思想の相違を感じるが、戦争中にふたりは再会し、急速に愛し合うようになり結婚。やがてハベルは映画脚本家となるが、50年代ハリウッド赤狩りの中、ケイティは反マッカーシズム運動を展開する一方、ハベルは己の創作に限界を感じ始め…。
20世紀アメリカ思想社会の流れと男女の愛の行方を巧みに組み合わせながら、ロマンティックな味わいを醸し出すことに見事成功した卓抜たる作品。ストライサンドが歌う主題歌は、今も歌い継がれる映画音楽のスタンダード・ナンバーである。

ロバート・レッドフォード特集をやっていたときに録画しておいた「追憶」をやっと見る。二度目。

追憶 - まみ めも

冒頭のロバート・レッドフォードのジョギングシーンのわき汗に目が釘付け。グレーのスウェットは汗じみがわかってなかなかよろしい。ロバート・レッドフォードのさらさらの金髪、白のソックスがとにかくまぶしい。前髪にそっとふれるケイティの指の震えよ。そしてやっぱりバーブラ・ストライサンド演じるケイティの愛がつらくて自分をかさねて泣きそうになってしまった。あー、人を好きになるってしんどい。愛を抱いたまま自分の道を歩きはじめたケイティのはればれした顔にほっとする。

世界の果ての国へ

家から最寄りの産院は、微妙かつやや過剰なセレブ感を醸しており、コンシェルジュのサービスがあってハーブティーを出してくれたり、入院する部屋も星だの宇宙だのコンセプトがあったり、お産のときにはモニターにタイミングにあわせてCongratulationsとメッセージが出たりする。ひとが一世一代レベルの必死こいてるこの状況でだれがこのメッセージのタイミングを操っているのかと思うけれどもわからずじまいだった。食事のメニューも凝っており、内容はもとより、美肌deアンチエイジングmenu、疲労回復BITEKIメニューなどと銘打たれた膳だったりして、ちょっとたじろぐ。祝膳でも、チーズケーキがハートの形にくり抜かれ天使の羽がささっていて、乙女仕様ぶりにおもわず笑ってしまった。産後のぼろぼろよれよれになった体との温度差よ。鏡にうつったすっぴんの顔は寝不足と疲れでむくれて、とても美肌とかアンチエイジングとか言ってる場合ではない。ともかく、ばびとのふたりきりの三晩をすごし、きょうで退院。

世界の果ての国へ (安房直子コレクション)

世界の果ての国へ (安房直子コレクション)

 

ト。

 鶴の家
日暮れの海の物語
長い灰色のスカート
木の葉の魚
奥さまの耳飾り
野の音
青い糸
火影の夢
野の果ての国
銀のくじゃく
シャガールの絵の中の鳥
言葉と私

入院の支度のなかには安房直子をいれておいた。お産の日はひとりきりで、ベッドに横になり、でも、気持ちがたかぶって眠れないので、世界の果てに連れてってもらう。お話の登場人物たちは遠くへいってしまった、わたしも眠りの世界にいって、つぎの朝は、ベッドで目が覚めた。世界の果てにはいってないっぽい。とりあえずこの世界でやっていく。おはよう、ばび。 

まよいこんだ異界の話

おしるしがあり、ぐりぐりする断続的な痛みでひどい寝汗をかき、夜はまともに眠れないのがふた晩つづいた。きのうは朝も寝床から起き上がれず、なんとか階下におりてソファに寝そべり、家族を見送ったあとで、すこし動けるようになって、おそ朝のフルーツとジュース、入院の支度を確認して、ソファにもたれて本をぺらぺらと眺めて過ごした。お昼は精をつけようと思って、ごはんを炊き、とっときに買っておいたうなぎを1/3尾、チンして、タレをまぶし、本当なら大葉と茗荷をたっぷり刻みたかったけれど、痛みが15分おき、立ち上がるとギューとするので、大葉を一枚だけちぎってのせたうなぎ飯をかきこんではや昼。病院に電話をし、タクシーを呼びつけ、歯みがきとこども宛のメモを残して、病院についたのが正午すぎ。いるかの舞う産室で、産ぶ声は二時間後だった。こんにちは、瞳のうるうるしたばびちゃん。

m.youtube.com

まよいこんだ異界の話 (安房直子コレクション)

まよいこんだ異界の話 (安房直子コレクション)

 

ト。

ハンカチの上の花畑 p9-116
ライラック通りの帽子屋 p117-154 
丘の上の小さな家 p155-214
三日月村の黒猫 p215-304 
昔おぼえた詩 p306-308 
私のアンデルセン童話集 p308-311 
小人との出会い p311-312 
小人と私 p312-313 
ライラック通りの帽子屋」のこと p313-315 
童話と家事と p315-317 
家の中の仕事 p318-320

妊娠中は食べものだけではなく本にもつわりがあるようで、そんなときに、苦みのあるさわやかな安房直子はぴったりだ。どこにもいかないで一番とおいところまで連れてってくれる。そして、ほんのりと、世界に魔法がかけられる。

あじフライを有楽町で

きのうからおしるしが続く。おなかの張りはあまりなく、よくわからないままなんとなくソファに横になって過ごすようにしている。気持ちが落ち着かないで、本の内容もあまり頭に入らず、ラジオをかけてうとうとする。きいたような音楽がはじまって、シャーデーかなと思ったら、RHYEのOpenという曲だった。

ト。

あの味を知ってしまったのは、幸福だったのか。志ん生が愛した天丼、衝撃のシカ肉、たまごサンド、パリのにんじんサラダ…。古今東西を駆け巡る、美味なるエッセイ78篇。『週刊文春』連載を書籍化。

こういうときにはややこしくない本に限る。安西水丸のイラストにはややこしさの余地がなくすばらしい。

博奕のアンソロジー

ふくちゃんが浦和レッズのフラッグキッズに当選して、予定日まであと九日の出っ腹を抱えてそわそわと埼スタにいってきた。キックオフぎりぎりにスタジアムに飛び込み、がちがちに緊張したピッチ上の豆つぶみたいなふくちゃんにおーいと手を振った。レインボーのかき氷のシロップがあっという間に溶けて混ざってどどめ色の液体になる暑さ、試合もパッとしなかったけれど、スタジアムの空気感に気分はもりあがった。試合のあと、なまぬるい夕風にほっとする。

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

 

ト。

読書家にして麻雀にも造詣の深い宮内悠介が、人気作家たちに「お願い」して誕生した、「博奕」モチーフのアンソロジー山田正紀「開城賭博」、軒上泊「人間ごっこ」など全10編を収録。『小説宝石』掲載を単行本化。

獅子の町の夜 梓崎 優

人生ってガチャみたいっすね 桜庭 一樹

開城賭博 山田 正紀

杭に縛られて 宮内 悠介

小相撲 星野 智幸

それなんこ? 藤井 太洋

レオノーラの卵 日高 トモキチ

人間ごっこ 軒上 泊

負けた馬がみな貰う 法月 綸太郎

死争の譜-天保の内訌- 冲方

浮き沈みが苦手なので、博奕でもりあがったりもりさがったり、ということに思いを巡らせるだけでおなかいっぱいになってしまい、ドリームジャンボも買う気にならない。形だけで知っていた文字を、うぶかたとう、と読めるようになってしまったことがちょっとつまらない。

黄色いマンション黒い猫

今日は買い物ついでに公園ではや昼。木陰のベンチを見つけて、セブンイレブンカスクートを炭酸水で流し込む。炭酸水がソッコーで汗に変換される。家に帰って、窓を開け放つと、窓から入ってくる風がモワッとする。アイスコーヒーに氷をたっぷり浮かべて、単行本を眺めつつ、熱風に吹かれてソファでうとうとした。はっと気づいたら、ガラスの氷は窓辺でおおかた溶けて、単行本が床に落ちていた。あと何回、こんなふうに怠惰にうたた寝できるのか。ちょっとだけ死の成分を味わう。

黄色いマンション 黒い猫 (Switch library)

黄色いマンション 黒い猫 (Switch library)

 

ト。

私は原宿を歩きながら、過去や、未来や、自分の心の中を旅した。今だから書けること、今しか書けないことを綴った、小泉今日子のエッセイ集。『SWITCH』連載に書き下ろしを加えて書籍化。 

予約して受け取ってみたら和田誠なんだもん。キョンキョンは最強のアイドルだ。

しばらく前に、診察を終えて、通りを挟んだスタバのソファ席に居座ってこの本を読んでいたら、キョンキョンからのエール(頑張れ妊婦!産めよ女子!)がふいに飛び込んできて、泣けるぐらいうれしかった。がんばるしかない、産むよ、キョンキョン

 

ああ、犬よ!

ちびっこ相撲があって、応援にかけつけたくてうずうずしたけれど、叶わず、おにぎりとウインナーや玉子焼きの簡単なおかず、駄菓子を持たせて送り出す。あっという間に負けて、だんまりで帰ってきた。

リトドリンを飲まなくなって、からだはだいぶましになり、気持ちにも余裕がでて、リトドリン+エビデンスでキーワード検索し、いまさらな情報を仕入れてげんなりしてしまった。きょうも診察、いよいよ感が募る。診察のあとはちょっとくたびれて、通りを挟んだ向かいにあるスタバでソファ席にもたれて、本(きょうは安房直子)を読みながらひと休みする。はちみつとミルクをたっぷり入れたアイスコーヒー。

ト。

作家と愛犬をめぐるエッセイや詩、マンガを集めたアンソロジー

弟ハリーのこと 杏

りっぱな犬って? 本上 まなみ

飼い犬の悲しみ アーサー・ビナード

転向・犬猫篇 星野 智幸

人と花と動物と よしもと ばなな

犬を飼わない理由 島田 雅彦

「犬の力」を知っていますか? 池田 晶子

愛しの動物たち 原田 宗典

without 松浦 寿輝

ルーカス 山本 容子

龍太郎のなみだ 道浦 母都子

犬が独り言を聞いてくれた 北方 謙三

へんてこりんな犬 宮本 輝

ルビや 村田 喜代子

犬影 藤原 新也

「話せば分かる」ってホント? 畑 正憲

深夜の冒険 藤子 不二雄A

あらった犬の体をはやくかわかす知恵 筒井 康隆

犬は犬であって… 江藤 淳

ネロ-愛された小さな犬に 谷川 俊太郎

犬隠しの庭 多田 智満子

犬の銀行 向田 邦子

名犬ビー公 小川 国夫

犬の眼 吉村 昭

子犬のいる風景 中野 孝次

犬と人間 丸谷 才一

我家の犬 水上 瀧太郎

こいぬ 北原 白秋

実家にいる、ツートン顔のいぬのことを思い出す。中学生のときにいついたのら犬と同じように、顔が左右で茶と白にわかれていて、似ているのが懐かしくて、動物病院で飼われていたのを、おかあさんが引き取ってきた。情けない顔立ちにいとしさが増す。いつも、ばいばいするときには、お父さんとお母さんを頼んだよ、と声をかける。わかっているのかいないのか、ぺろぺろと手を舐める。なんにもわかっとらんでいい、元気でおってくれ。