まみ めも

つむじまがりといわれます

さあ、熱いうちに食べましょう

水曜の朝にせいちゃんが喉の痛みをうったえて、その日は営業の電話がかかってくる以外にたいした用事がなかったのでまるっと休むことにした。ちかくの小児科にいき、せいちゃんの自転車にまたがり買い物のついでに図書館と薬局に寄り、帰ってきて布団を干したりシーツを洗ったり、合間に本を読んだりする。せいちゃんは食欲もないようでおかゆやうどんをちまちま啜っている。次の日は弁当を持参する日で、ちくわを入れてくれだの、卵は玉子焼きにしてくれだの、いっていたので、夜に起き出しておかずを作り半端なおかずをつまみにビールを飲み、朝は早起きして炊きたてのごはんとおかずを弁当箱に詰めて(おかかを挟んだ海苔弁)、しかしせいちゃんは怠さが抜けずに学校を休んで、家でひとりぼっちで弁当を食べた。きょうもやっぱり休んでいる。しんどそうなので午後は休むことにしてまた小児科に連れていく。

なまぬるい十一月。銀杏と椿の花びらがいっしょになって落ちている。

さあ、熱いうちに食べましょう: 料理エッセイ集

さあ、熱いうちに食べましょう: 料理エッセイ集

  • 作者:入江麻木
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: 単行本
 

ト。

イースターに食べるロシア風パンケーキ、ビーツをたっぷり入れた赤い赤いボルシチ、幼いころのコロッケ屋さんごっこ…。本場仕込みのセンスと温かい人柄で女性の憧れだった料理家のエッセイを初集成。小澤征良の寄稿も収録。

ロシアとわたし(義父が教えてくれたこと イリイン家の暮らしと作法 パパが大連に! ほか) 異国暮らし(旅 ボウリュー 魅惑的な友人、マダム・ルリング ほか) 時と人生(窓;小さなコロッケ屋さん 私の郷愁 日本料理 ほか) 魔法使いのタァタ(小澤征良)

なにも知らずに本を借りて読んだら、童話を読むような懐かしい光に満ちたエッセイだった。なんて一途でチャーミングな人なんだろう。

がんばれヘンリーくん

会社に持参する水筒にはずっとアイスのカフェオレを入れていたのだけれど、丸八製茶の茶葉「ほうじたて」と「献上加賀棒茶」をもらって、朝、ほうじ茶を沸かしてたっぷりに詰めてみた。ふうふうするときに鼻先に漂うにおいが懐かしい。

ト。

ヘンリーくんは小学三年生。どこにでもいる、ごくふつうの男の子です。ある日、街角でやせこけた犬を拾い、こっそりバスに乗せて家までつれて帰ろうとしましたが、とちゅうで犬があばれだして大さわぎに…。それいらい、ヘンリーくんのまわりでは、次つぎにゆかいな事件がおこります。

ヘンリーとアバラー

百万びきのグッピー

ヘンリーと夜のお客さま

みどりのクリスマス

うすもも色の犬

ひろったものはその人のもの

小二のふくちゃんが珍しく本を読むようになって、おすすめしたヘンリーくんを一緒になって読む。日記を確認したら、三年前のちょうど十一月に小一のせいちゃんと読んでいた。せいちゃんは相変わらず本の虫で、図書館に二週間おきに出かけ、持てるだけの本を借りてリュックの中にごつごつに詰めて帰ってきて、そしてあっという間に読んでしまう。ふくちゃんはヘンリーくんの一冊を、二週間かけて読む。どっちもいいと思う。三年ぶりに再読するヘンリーくんは、相変わらずとてもとてもよかった。三年前には想像できなかった未来にいるけれど、ヘンリーくんにまた会えてよかった。ふーちゃんと、げんちゃんと、あと二回いっしょに読めるといいな。

おんぶにだっこ

満を持してぶんぶんチョッパーを買った。うれしくなって、肉も野菜もぶんぶんしてことごとくみじん切りにしてカレーを鍋にいっぱい煮た。コールスローもキャベツと人参をぶんぶんしてたっぷり作る。コールスローはぶんぶんするとケンタッキーっぽくなる。お昼のサンドイッチ用の人参サラダもしりしりからぶんぶんに鞍替え。しりしりよりも少し歯ごたえが残る。

おんぶにだっこ

おんぶにだっこ

 

ト。

おっぱいをやめた日、指を切った時の思い出、乳母車から見た景色、大規模な心配、フラダンスへの想い…。「幼年期」をテーマに、爆笑と感動を超えた「まる子」以前の日々を描くエッセイ集。

おっぱいをやめた日/ 指を切った時の思い出/ ひらがなの練習/ 乳母車から見た景色/ お嫁にいった育ちゃん/ 町のふしぎ/ もらった人形/ 心の声/ 大規模な心配/ 盗んだビーズ/ ヘビの思い出/ フラダンスへの想い/ 窓のおばあちゃん/ 大失敗/ 古い顕微鏡/ 雲の中に入った思い出/ 家の改装/ 小さいツルの思い出/ セキセイインコが逃げた/ ジュウシマツ屋開店の夢/ 折りヅルの世界展を見に行く/ たまちゃんとの出会い/ 上松君のランドセル/ 松永君をぶった

空気のにおいまで伝わるような幼少期の記憶のこまごま。幼少期をまったく覚えていないので、自分のなかで永遠にうしなわれてしまったなにかがたしかにここにある。ももこの幼少期の思い出をたどることで、ちいさな胸に去来した思いを味わいなおす。

村上春樹全作品 1990~2000 第7巻

夕暮れがいよいよ早い。秋の雲。鳥がギーギー鳴いている。闇市風情の八百屋で津軽産のりんごが箱で864円だったのを自転車でよたよた持ち帰った。何年ぶりかでヨーグルトポムポムを焼く。簡単で素朴なおやつで、これを気に入ってまた作ってねと言ってくれた友だちのことを思い出す。

いつのまにかRummyがのべ棒ではなくなった世界に移行していたことを知る。Rummy愛を試されているような気がしてうかつに買えない。

ト。

オウム真理教の信者の気持ちや主張を聞き書きした「約束された場所で」、雑誌「世界」に掲載された河合隼雄氏との対談を書籍化した「村上春樹河合隼雄に会いにいく」を収録。著者による書き下ろし「解題」も掲載。

河合隼雄のことばがいちいちすごくて、なんなのだこの説得力は。村上春樹が結婚生活とはお互いの欠落の相互マッピングの作業だといっていて、なるほどなと思った。

1968[3]漫画

休みを継ぎはぎして帰省しお父さんの一周忌とおばちゃんの四十九日を済ませてきた。帰省の当日は五時半起きで弁当をふたつこさえ、自分はいつもの人参サラダのサンドイッチを持って仕事に出て、五時過ぎに帰宅して荷物をまとめて保育園にお迎えにいきそのまま新幹線に乗り込んだ。お誂えむきに月のものもやってきて、泣きわめくげんちゃんにマスクをはぎ取られたりしながらへとへとで金沢についておかあさんの顔を見たときにはほっとした、けれども、そのあとで車酔いのふーたんが家まであと十メートルの車中で吐くし、げんちゃんはしがみついてトイレにいく数分はなれても大泣きする四泊五日。気が急いたお母さんが喪服で車から駆け下り謎のダッシュをみせたのが一番のハイライトだった。おとうさんがいなくなってもうすぐ一年が巡る。不在の日々をこれからも積み重ねていく。

1968[3]漫画 (筑摩選書)

1968[3]漫画 (筑摩選書)

  • 発売日: 2018/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ト。

佐々木マキつげ義春水木しげる赤塚不二夫…。辛辣なるパロディから無垢のノンセンスまで、1968〜72年の5年間に発表された、時代の<異端者>たちが遺した漫画群を収録。

漫画に何が起こったか p9-42 四方田 犬彦/著
山姥子守唄 p43-77 林 静一/作
ヴェトナム討論 p79-98 佐々木 マキ/作
墓地へゆく道 p99-114 岡田 史子/作
ゲンセンカン主人 p115-143 つげ 義春/作
彼等 p144-192 つりた くにこ/作
完全なる答案用紙 p193-222 上村 一夫/作
勝又進作品集(抄) p223-232 勝又 進/作
天才バカボン p233-246 赤塚 不二夫/作
緑色なる花弁-性紀末伏魔考- p247-269   宮谷 一彦/作
メッタメタガキ道講座 p271-305 谷岡 ヤスジ/作
涙ののるま p307-334 水木 しげる/作
回転 p335-364 山上 たつひこ/作
化石の森 p365-388 大山 学/作
牙 p389-412   沼田 清/作
たこになった少年 p413-438 淀川 さんぽ/作
肉屋敷 p439-448 花輪 和一/作
ひっとらぁ伯父サンの情熱的な日々 p449-472 藤子 不二雄A/作
三面鏡の戯れ p473-490 池上 遼一/作
フーテン・21時 p491-502 樋口 太郎/作
臨時ニュース p503-536 楠 勝平/作
美代子阿佐ケ谷気分 p537-550 安部 愼一/作
『ガロ』の世界 p551-559 鶴見 俊輔/著
佐々木マキ・ショック・1967 p561-566 村上 春樹/著
つげ義春覚え書-「ねじ式」における芸術の情況- p567-580 天沢 退二郎/著
1968-<破壊的性格>の時代- p581-593 中条 省平/著

佐々木マキの名前で蔵書検索して何気なく借りたものの、とんでもない漫画たちのオンパレードだった。

アガワ家の危ない食卓

出社するなりセイちゃんが学校をサボっていることがわかり、どたばたと連絡をする。朝の忙しいときに本に夢中になり支度が進まず苛々のつのったやど氏に出ていけといわれた売り言葉に買い言葉で本当に家を出ていったとのこと。やど氏もカッカきて学校に連絡をいれないままほっとけばいいと言い放ち所在が確認できないので学校で騒ぎになり先生が家まで出向いたり往来を探してくださった。みんなが出たあとで家に上がっており電話するととにかくきょうは学校にはいかないの一点張りなので休ませることにしてお昼は冷やご飯をあたためて鍋の底に残っていたカレーを食べたらしかった。折しも午後は個人面談の予定で休みをとっていたので、買い物を済ませて家に帰ったらカーテンを閉め切って午後ロードを見ていた。気持ちもいくぶん落ち着いた様子で、あしたはちゃんと学校にいくというので、とりあえず個人面談では平謝りをしてきた。先生は、学校でも本の虫をやっていて宿題も出さずにたまっていると、爽やかにわらっていた。先生には申し訳ないが宿題のこともだらしないこともあまり気にしておらず、人を傷つけたりはしないのでまあいいかと思っていたりする。それくらいのことならいくらでも代わりに謝る用意はできている。

アガワ家の危ない食卓

アガワ家の危ない食卓

  • 作者:佐和子, 阿川
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ト。

「まずいものは食いたくない」がモットーの父。怒りん坊の亭主と子供達のために台所に立ち続けた母。毎食が波乱含みの一家の歴史を、食卓の情景で綴る。和田誠への追悼文も収録。『波』『クロワッサン』掲載を書籍化。

旨いプレゼント

風々録その後

冬瓜と父さん/おまけの勝ち/十品目トライ/混沌の秘境/ひさしブリ/若き日の栗羊羹

小腹の幸

素手にぎり

かつぶしご飯

泡だらけ伝授

母の味

キャベツ巻きそれぞれ

デビルオムレツ

すでにアッタリー・ガッカリー

ハム入りマカロニの謎

牛乳嫌い

楽屋まで 二度使い

箸箸のすむ処

贅沢アレルギー

韓国、夏の陣

蘇るザヅィキ

浩二君の魅力

海山の威厳

コールタールの春

ワクワク病人食

おかゆさん

トラウマの豚

地震のあと

持久食/宮古の秋刀魚/カツオ旅

酒と和田さんの日々

よその台所をのぞくよろこび。トーストに砂糖をふりかけてホットミルクを注ぐというアガワ家秘伝のミルクトースト、今度だれかが元気ないときにやってみよう。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

週末、ふみちゃんと庭掃除に精を出す。げんちゃんがおんぶにだっこで、おろすと泣いていやいやするので、おぶったまま、庭の落ち葉を掃き集め、草をひっこ抜き、どんどんゴミ袋に詰めていく。ふたりでメガを名乗るℓの袋をぱんぱんにした。庭が少しだけさっぱりした。これでいい。ふたりでやるとお話ししながらできていいね、というと、ふみちゃんの女優スイッチがオンになり「ひとりでみるそら、みんなでみるそら!!」とラブパトリーナのせりふを女優モードで引用して共感してくれた。ひとりでやる庭掃除よりみんなでやる庭掃除。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
 

ト。

優等生の「ぼく」が通い始めたのは、人種も貧富もごちゃまぜの「元・底辺中学校」。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の「ぼく」と著者である母は、ともに考え悩み乗り越え…。傑作エッセイ。『波』連載を書籍化。

もどかしい悩みを淡々と受け入れていくぼくの姿が頼もしい。さて、自分はなに色だろうと思ったらどどめ色と浮かんだ。