まみ めも

つむじまがりといわれます

かなわない

こどもたちの皮膚科ついでに浦和宿古本いちへ。予約受付の順番がだいぶ先だったので、受付を済ませてから古本いちでゆっくり品定めをして、皮膚科の待合室でそれぞれに本をひろげた。110円均一のワゴンから三冊。風の強い日だったけれど、ひだまりはあたたかかった。

タコの丸かじり 東海林さだお

圏外へ 吉田篤弘

ラオスにいったい何があるというんですか? 村上春樹

かなわない

かなわない

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ト。

震災直後の不安を抱きながらの生活、育児に対する葛藤、新しい恋愛、そして救済の日々…。写真家・植本一子が書かずにはいられなかった家族、母、生きづらさ、愛を淡々と綴ったエッセイ集。ブログ『働けECD』他を書籍化。

タブーにどんどんわしづかみで触れていく。ものすごいエネルギー。

村上ラヂオ

ぴかぴかの一年生のふみちゃん、しばらくお弁当だったけれど、たのしみにしていた給食がはじまった。どうだった、おいしかった、と聞くと、なんとなく元気がなくてしょんぼりしている。よくよく話を聞くと、給食がぜんぜん足りないのだという。ふみちゃんがいやがったので、ばれないように、連絡帳にそっとメモを挟んで、給食を多めにしてもらえないか先生にお願いをした。給食室にお願いして配膳も増やしてもらったらしく、もう大丈夫。はじめての連絡が給食のお願いというところが、くいしんぼうのふみちゃんらしい。

2020年9月のブックオフで110円。和田はラヂヲだけれど村上はラヂオ。ヲのときは気持ちゥオで発音してしまう。

公園のベンチで食べる熱々のコロッケパン。冬のゴルフコースをスキーで走る楽しさ――。オーバーの中に子犬を抱いているような、ほのぼのとした気持ちで毎日をすごしたいあなたに、ちょっと変わった50のエッセイを贈ります。柿ピーの諸問題、楽しいレストランでの大惨事(?)から、きんぴら作りに最適なBGM、そして理想的な体重計の考察まで、小さなドラマが一杯!

大橋歩のイラストが微量の不穏さをはらんでいてよかった。

村上朝日堂

ふくちゃん、10歳のお誕生日だった。みんなで、ふくちゃんがてんさいになった!とお祝いをする。週末にパーティー。リクエストは焼肉とチョコバナナのビスケットケーキ。焼肉でビールをリットルで消費したあとによっぱらってケーキのデコレーション(チョコレートソースで、ふくちゃんてんさい、と書いた)をしたらぐにゃぐにゃの字になった。翌朝になってスマホのなかにぐにゃぐにゃのデコレーションの現場感強めの写真をみつけた。プレゼントはラジコンカー。

いつかのブックオフ

ビールと豆腐と引越しとヤクルト・スワローズが好きで、蟻ととかげと毛虫とフリオ・イグレシアスが嫌いで、あるときはムーミン・パパに、またあるときはロンメル将軍に思いを馳せる。そんな「村上春樹ワールド」を、ご存じ安西水丸画伯のイラストが彩ります。巻末には文・安西、画・村上と立場を替えた「逆転コラム」付き。これ一冊であなたも春樹&水丸ファミリーの仲間入り!?

二度め。けっこう覚えていなかったおかげで存分にたのしめた。

村上さんのところ

金曜の夜はハンバーグを焼いて、ごはんのあとは家族みんなでソファに並んでテレビを見た。菓子パンの袋のつもりで出たけれど、正真正銘の菓子パンの袋がつむじ風に舞っている映像がうつっていた。

おとうさんが死んだことは、どうしようもない大きな穴だけれど、時間をかけて喪失感は少しずつ自分のものになって、損なわれた自分として生きていくということが、死を受け入れるということなのかなと感じるようになった。木下龍也さんにもらった短歌は、素直ではないわたしの素直なきもちを、素直なことばで掬い上げてくれた。木下さんのことばは何度も反芻するうちにわたしの一部になり、埋めようのない大きな穴を、穏やかにやさしく照らしている。

そんなことを、テレビの取材を通じてはじめてきちんと考えた。NHKのディレクターさんは、こちらの生活にあわせて何度も週末に足を運んで、とりとめのないわたしの気持ちをわかろうとしてくれた。こんなふうにおとうさんに対する自分の気持ちを誰かに打ち明けたことはなかったので、ちょっと、いい時間だったなと思う。

古本いちで。いくらだったかは忘れてしまった。

4ケ月限定の質問・相談サイト『村上さんのところ』で、村上春樹が答えた約3700問の中から名問答473問を厳選して収録。日常のお悩みから、ジャズ、恋愛、生き方まで、迷ったら何度でも読み返したい「人生の常備薬」。

ちょうどインタビューを受けているときに読んでいた本。身近な人の死の受け止め方について村上春樹がこう書いている。

「もしあなたの中に空洞があるのなら、その空洞をできるだけそのままに保存しておくというのも、大事なことではないかと思います。無理にその空洞を埋める必要はないのではないかと。これからあなたがご自分の人生を生きて、いろんなことを体験し、素敵な音楽を聴いたり、優れた本を読んでいるうちに、その空洞は自然に、少しずつ違うかたちをとっていくことになるかと思います。人が生きていくというのはそういうことなのだろうと、僕は考えているのです。」

暗いところで待ち合わせ

休園のおしらせの翌朝にげんちゃんが熱を出し、そうこうするうちに濃厚接触者の連絡がはいった。かたっぱしから電話をかけまくって検査の枠をおさえ、一般診療の終わった六時半に自転車で小児科に乗りつけた。PPEをつけた看護師が薄暗がりに待っていて、裏口に案内され、診察室にははいらず階段下のスペースで、やっぱりPPEをつけた医師に診察してもらう。いったん外に出て薄暗がりで鼻の奥に綿棒をつっこんで検体をとった。熱が40℃をこえて坐薬を使った。次の次の日に電話がかかってきて、結果はまあ陽性なんだろうなと思っていたら陰性で拍子抜けした。熱がさがったら声が枯れてドナルドダックみたいになっている。

エフ本。

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった。

そういえば、大学生のときに男友だちから借りたのが死にぞこないの青だった。変わった人で、賃貸のアパートの庭に穴を掘ってカエルを飼って大家さんに叱られていた。もうしばらく音沙汰がないけれど、元気にしているのかなとふと思う。

あなたのための短歌集

ふみちゃんの入学式、が午後からだったので、昼前にぴかぴかのランドセルを背負ったふみちゃんと小学校にいって、入学式の立て看板の前で写真を撮ってから、ロイヤルホストまで歩いてお昼をした。入学式の看板はいつも正門前にあって記念撮影が長い行列になるので、今年は校庭のまんなかに立てられており、背景に校舎がうつるのだった。うらうらした日和だったので、午後の体育館はねむたくて、あくびがたくさん出た。ふみちゃん、おめでとう。

父の亡くなった半年後に、遺産で木下龍也さんのあなたのための短歌を買ったことが縁で、テレビの取材を受けた。

https://www.nhk.jp/p/netadori/ts/QL8GZ2L5VX/

地味な中年女が目も当てられない様でうつっているに違いないけれど、こんなことは地味な人生に二度とないと思うので、お知らせします。菓子パンの袋になったつもりで出ています。

つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる

滅私

春先の、寒さにしてもあたたかさにしても頼りないところが好き。目覚ましの鳴るちょっと前かだいぶ前に目が覚めてしまい、アラームを聞かない日が続いている。薄闇の布団のなかでぼんやりしている時間に、足先が冷えるような気がして体をまるめる。

アルバムをひらいて、古い写真を見返したら、お父さんとうつっている写真は四枚しかなかった。このころのお父さんより歳を重ねたはずなのに、自分はこのころと変わらず頼りないままでいる。

滅私

滅私

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ト。

必要最低限の物だけで生活するミニマリストの男。物欲から解放され自由を得たはずが、なお因果は尽きず…。ミニマリズムの果てに待ち受けるのは? SDGsの現代を描く悲喜劇。『新潮』掲載を単行本化。

ミニマリストになれないことは本棚と冷蔵庫をみたらわかる。