まみ めも

つむじまがりといわれます

孤独のレッスン

梅が散っている。鼻水とのどの違和感とそこはかとない悪寒があり、毎年のことながら、風邪をなのか花粉症なのか更年期なのかよくわからずにいる。せいちゃんが帰ってくるというので、朝のうちにふとんを全部ベランダにほして、庭でうっすら砂ぼこりをかぶっていた自転車を水拭きした。電話越しのせいちゃんは顔がまるくなっている。

卜。

日常の中でふと感じる孤独はどこからやってくるのか。どのように向き合えばよいのか。思想家、作家、冒険家など17人が、孤独について考える。

仏陀に学ぶ、単独者としての作法 齋藤 孝

孤独と追放-アルベール・カミュ最後の一〇年- 中条 省平

永井荷風-独身者の悦びと不安- 奥本 大三郎

孤独の詩を読む-ポオとラヴクラフト- 南條 竹則

サン=テグジュペリ-人生と思索を鍛え上げたもの- 鈴木 雅生

三木清と孤独 岸見 一郎

ソロー『森の生活』が語りかける声 新元 良一

孤独の哲学者ニーチェ 適菜 収

孤高の俳人尾崎放哉と種田山頭火 下重 暁子

 “孤独”を取り込み、自由に生きる 岸 惠子

引きこもり作家のリアル 田中 慎弥

「意識の孤独」の手綱を引いて生きる 高村 友也

隠遁者の孤独 林 望

孤独のゾンビ映画論 荒木 飛呂彦

ジョン・ル・カレが描くスパイの孤独 石戸 諭

サピエンス-孤独な種の恍惚と不安- 吉川 浩満

単独行がもたらす究極の孤絶 角幡 唯介

飲み会のときに、みんなが楽しく賑やかにしているとさみしくなる、とそっと打ち明けてくれた友だちのことを思い出す。

そして、バトンは渡された

やっとふみちゃんが元気になって、週明けの月曜はブルーなマンデーで勇気がないといって休んで雪景色を眺めていたけれど、火曜からようやく学校に行って、ほっとしたと思ったら、その夕方からふくちゃんがくすぶりだして、二日休んでから39.8℃の熱をたたきだした。雪のあいだ、送り迎え以外はどこにもいかなかった。そりで登園するのを期待していたげんちゃんは思ったよりも積もらなくてすこし残念そうだった。早起きをしたふみちゃんが小さな雪だるまをふたつ作り、ふくちゃんは雪かきをしたいといって雪の山をつくった。雪のあいだ、しんとした静けさが育った町を思い出して懐かしくなる。

ト。

血の繫がらない親の間をリレーされ、4回も名字が変わった森宮優子、17歳。父親が3人、母親が2人。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。身近な人が愛おしくなる、優しい物語。

自分以外の未来に手が触れられる。森宮さんいいこと言う。

カレーライスと餃子ライス

月曜の朝、ふみちゃんがのどが痛いとうったえ、憂鬱な気持ちはよくわかるので休ませたら、みるみる熱があがり、水曜日になってようやくさがったけれど、食欲不振と倦怠感でリビングのソファに毛布と布団をもちこんで、ずっとねそべっている一週間だった。なぜかまぶたが二重になっている。

鍋にたっぷりのおでんを仕込み、手巻きのキンパですこしだけ節分の気分を味わう。明るい時間が長くなり、はっさくがこの季節の軽い空気にぴったりする。

ト。

神保町、下北沢、京都…。専用スプーンを胸にひそませ、今日も続くカレー漂流。そして青春の食事には、餃子ライスが必要だ-。記憶と幻想で紡がれる物語。『夕刊フジ』連載に書き下ろしを加えて書籍化。

おもわずタイトルで借りてしまったけれど、カレーライスと餃子ライスがしっかり片岡義男ワールドで語られていて、思ってたんと違うような、違わないような。

残虐記

日曜日、弁当をふたつおにぎりを四つサーモスにスープをふたつ作って送り出したら、げんちゃんとふたりの一日があったので、映画館にいくことにした。げんちゃんのはじめての映画は劇場版 SPY×FAMILY CODE: Whiteに決定。りんごジュースとラテとチョコレートを買った。子どものころ、映画館で映画をみるときは、売店とんがりコーンとピックアップを買っていたことをふと思い出す。なぜかお正月は家族で映画に出かけていたっけ。帰りはいつもロードサイドのすかいらーくで、かにピラフ以外のメニューを頼めない重篤な病にかかっていたこともあわせて思い出した。

映画のあとははま寿司でおそ昼。ふたりでカウンターに並び、仕切りの板が邪魔なので椅子を寄せてひとり席にふたりで身を寄せてお寿司を食べた。お父さんが好きだったわさびなすを必ず頼む。

卜。

失踪した作家が残した原稿。そこには、25年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。奔流のようにあふれ出した記憶。『週刊アスキー』連載に加筆して単行本化。

ノンフィクションで、家族を殺された遺族が、死刑になった犯人と自分だけが崖の下にいて、あとの人はみんな上から見下ろしているというようなことを話していたのを、久しぶりに思い出してしまった。

現代生活独習ノート

今年も、駅前の八百屋のレジがハッピーバースデーで誕生日を祝ってくれた。レジうちのご婦人が、お誕生日ですね、と淡々と対応し、絶妙ないたたまれなさを味わうところも含めて恒例となりつつある。家族が祝ってくれるというので、焼き肉屋にいき、ビールをたくさん飲んだ。

遊歩道の梅は1月10日にもう咲いていた。一番寒さがしんどい季節に咲いて、近くを通る瞬間ふわっとにおい、はなやかな気持ちにすこしだけ憂鬱がまじる。

卜。

偶然録画していた興味のない番組、冷蔵庫内の陣地争い、貧弱な食事ばかりのSNS画面…。キラキラしていなくても冴えない日常は、案外愛しく、悪くない。“今”が詰まった8つの物語。

レコーダー定置網漁

台所の停戦

現代生活手帖

牢名主

粗食インスタグラム

フェリシティの面接

メダカと猫と密室

イン・ザ・シティ

津村記久子にしかたどりつけない絶妙なリアルワールド。

イン・マイ・ライフ

村上春樹も木下龍也もおめでとうだけれど、わたしもおめでとうだった。ふくちゃんがいなげやで買ったヒアシンスを、ふみちゃんは折り紙を、げんちゃんはふみちゃんに折らせた折り紙を、せいちゃんはおめでとうのメッセージを遠くからくれた。

せいちゃんは結局冬休みにはこちらに戻らず、実家にとどまっている。新聞のコラムを書き写したり、図書館で本を借りたり、畑仕事を手伝ったりしているらしい。毎日電話できょうのコラムについて教えてくれる。

卜。

年をとるって、かくも愉しく忙しい。スタイリストとして『アンアン』『オリーブ』『クロワッサン』の草創期を駆け抜けた半生と、熊本ではじめた62歳からの仕事と暮らしについて綴る。

宇野千代の隠れ家が気になる。

約束した街

帰省先で家族がインフルエンザになりやれやれと思っていたら年明けに地震があり、なんともいえないお正月になってしまった。夜じゅうずっと、ヘリのとぶ音がしていて、非常事態なのだという事実がせまってくる。さいたまに戻る前日の深夜に胃腸炎になり、トイレにこもってがたがた震えているとき、がれきのしたにいる人やその家族のことを思う。せいちゃんが調子をくずし、予定していた朝の新幹線にいっしょにのれず、ひとりおいてきた。電話口で戻りたくないというのを、とんぼ返りで迎えにいく。生きているというのは、ときどきとても心細い。

卜。

世の中のはみだし者の幼馴染3人は、15年後の再会を約束する。かつてやり残した「宿題」を終わらせるために…。「ある罪」によって繫がった仲間たちを描いた慟哭の長編ミステリー。

年明けにひらいた本は、阪神淡路大震災のときに中学校を卒業した三人をめぐる話。あの震災のときは、車庫のシャッターがかたかたと揺れていた。オレンジジュースが飲みたくなった。