まみ めも

つむじまがりといわれます

終点のあの子

川上未映子がだいじょうぶと言ってくれて、自分が親の死に目で知ったことも、だいじょうぶということだったなと改めて気がついた。だいじょうぶと思わせてくれたお父さんはやっぱり大きな存在だった。親が死ぬという予感はとてつもなく不安で切なくてやりきれなかったけれど、ちゃんとさよならをする時間があったことは本当にありがたかった。

棚の上のもろもろをどかしてお雛様を飾っている。少しだけ家の中が春らしくなる。

卜。

ゆらぎやすい女子高生の友情を描く短篇集。プロテスタント系女子高の入学式の日。中学からの内部進学者の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマンだった。希代子は風変わりな朱里が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、ある変化が訪れる。外部からの進学者の朱里には見えない、女子校ならではの「ルール」。希代子はその枠から飛び出した存在になってしまうのか?華やかに見える少女たちの日常に潜む、複雑な心情と、絡み合う人間関係。少女たちの繊細な心理描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作「フォーゲットミー、ノットブルー」を含むオムニバス四篇。

やり直しはきくけれど取り返しのつかない淡い日々。みんな何ものかになりたくて、でも自分以外の何ものにもなれない。

数えないで生きる

風邪なのか花粉症なのか更年期かわからない状態で鼻水とそこはかとない悪寒が続いていたけれど、どうやら副鼻腔炎になってしまったらしいことだけははっきりとわかってしまう。なんとか病院にかからずにすませたくて、点鼻薬をためす。薬をすすりあげるときは、どうしてもレオンのゲイリー・オールドマンの気分になる。風が強い日はなんだかこの世じゃないどこかに通じてしまいそうでわくわくしてしまう。

卜。

「他者を理解できないのと同じく、人生のこともすべてわかっているわけではない」「本当に大事なことを考えるためにはじっくり問題と向き合い、考え抜かなければならない」…。今日を丁寧に、豊かに生きるヒントを示す。

とにかく忘れっぽいので、同じことを何度でも丁寧に教えてくれる岸見一郎は本当にありがたい。

荻窪メリーゴーランド

日曜にせいちゃんが帰ってきた。改札を通るせいちゃんを見つけて、げんちゃんが走っていってとびつく。その日はぎょうざの満洲でお昼をたべた。ビールと餃子。久しぶりに家族がそろったのでビールがうまい。週明けから朝は家のまわりをジョギングし、学校にいき、テストも受けるだけは受けてきたらしい。むこうでとっている新聞のコラム(中日春秋)を書き写していたノートを持ち帰ってきた。年明け11日から2月14日まで。八代亜紀の話題ではじまっているのをひとつずつ読んでいる。

卜。

待ち合わせには早すぎる改札で後ろから君が抱きしめてくる 会ってすぐ次に会う約束をしてそれでも足りないような気がした 虚構のラブストーリー短歌。Webマガジン『OHTABOOKSTAND』連載を加筆し書籍化。

待ち合わせにはかならず待たされるので本当に待ち合わせするはずの時間より早い時間を伝えて、それでもちゃんとはやい方の待ち合わせ時間にいって、やっぱり待たされたことがあったのを思い出す。

孤独のレッスン

梅が散っている。鼻水とのどの違和感とそこはかとない悪寒があり、毎年のことながら、風邪をなのか花粉症なのか更年期なのかよくわからずにいる。せいちゃんが帰ってくるというので、朝のうちにふとんを全部ベランダにほして、庭でうっすら砂ぼこりをかぶっていた自転車を水拭きした。電話越しのせいちゃんは顔がまるくなっている。

卜。

日常の中でふと感じる孤独はどこからやってくるのか。どのように向き合えばよいのか。思想家、作家、冒険家など17人が、孤独について考える。

仏陀に学ぶ、単独者としての作法 齋藤 孝

孤独と追放-アルベール・カミュ最後の一〇年- 中条 省平

永井荷風-独身者の悦びと不安- 奥本 大三郎

孤独の詩を読む-ポオとラヴクラフト- 南條 竹則

サン=テグジュペリ-人生と思索を鍛え上げたもの- 鈴木 雅生

三木清と孤独 岸見 一郎

ソロー『森の生活』が語りかける声 新元 良一

孤独の哲学者ニーチェ 適菜 収

孤高の俳人尾崎放哉と種田山頭火 下重 暁子

 “孤独”を取り込み、自由に生きる 岸 惠子

引きこもり作家のリアル 田中 慎弥

「意識の孤独」の手綱を引いて生きる 高村 友也

隠遁者の孤独 林 望

孤独のゾンビ映画論 荒木 飛呂彦

ジョン・ル・カレが描くスパイの孤独 石戸 諭

サピエンス-孤独な種の恍惚と不安- 吉川 浩満

単独行がもたらす究極の孤絶 角幡 唯介

飲み会のときに、みんなが楽しく賑やかにしているとさみしくなる、とそっと打ち明けてくれた友だちのことを思い出す。

そして、バトンは渡された

やっとふみちゃんが元気になって、週明けの月曜はブルーなマンデーで勇気がないといって休んで雪景色を眺めていたけれど、火曜からようやく学校に行って、ほっとしたと思ったら、その夕方からふくちゃんがくすぶりだして、二日休んでから39.8℃の熱をたたきだした。雪のあいだ、送り迎え以外はどこにもいかなかった。そりで登園するのを期待していたげんちゃんは思ったよりも積もらなくてすこし残念そうだった。早起きをしたふみちゃんが小さな雪だるまをふたつ作り、ふくちゃんは雪かきをしたいといって雪の山をつくった。雪のあいだ、しんとした静けさが育った町を思い出して懐かしくなる。

ト。

血の繫がらない親の間をリレーされ、4回も名字が変わった森宮優子、17歳。父親が3人、母親が2人。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。身近な人が愛おしくなる、優しい物語。

自分以外の未来に手が触れられる。森宮さんいいこと言う。

カレーライスと餃子ライス

月曜の朝、ふみちゃんがのどが痛いとうったえ、憂鬱な気持ちはよくわかるので休ませたら、みるみる熱があがり、水曜日になってようやくさがったけれど、食欲不振と倦怠感でリビングのソファに毛布と布団をもちこんで、ずっとねそべっている一週間だった。なぜかまぶたが二重になっている。

鍋にたっぷりのおでんを仕込み、手巻きのキンパですこしだけ節分の気分を味わう。明るい時間が長くなり、はっさくがこの季節の軽い空気にぴったりする。

ト。

神保町、下北沢、京都…。専用スプーンを胸にひそませ、今日も続くカレー漂流。そして青春の食事には、餃子ライスが必要だ-。記憶と幻想で紡がれる物語。『夕刊フジ』連載に書き下ろしを加えて書籍化。

おもわずタイトルで借りてしまったけれど、カレーライスと餃子ライスがしっかり片岡義男ワールドで語られていて、思ってたんと違うような、違わないような。

残虐記

日曜日、弁当をふたつおにぎりを四つサーモスにスープをふたつ作って送り出したら、げんちゃんとふたりの一日があったので、映画館にいくことにした。げんちゃんのはじめての映画は劇場版 SPY×FAMILY CODE: Whiteに決定。りんごジュースとラテとチョコレートを買った。子どものころ、映画館で映画をみるときは、売店とんがりコーンとピックアップを買っていたことをふと思い出す。なぜかお正月は家族で映画に出かけていたっけ。帰りはいつもロードサイドのすかいらーくで、かにピラフ以外のメニューを頼めない重篤な病にかかっていたこともあわせて思い出した。

映画のあとははま寿司でおそ昼。ふたりでカウンターに並び、仕切りの板が邪魔なので椅子を寄せてひとり席にふたりで身を寄せてお寿司を食べた。お父さんが好きだったわさびなすを必ず頼む。

卜。

失踪した作家が残した原稿。そこには、25年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。奔流のようにあふれ出した記憶。『週刊アスキー』連載に加筆して単行本化。

ノンフィクションで、家族を殺された遺族が、死刑になった犯人と自分だけが崖の下にいて、あとの人はみんな上から見下ろしているというようなことを話していたのを、久しぶりに思い出してしまった。