まみ めも

つむじまがりといわれます

町でいちばんの美女

町でいちばんの美女 (新潮文庫)
ブコウスキーの名前をどこで知ったかしらないが、なんだか頭にのこっていて、ブックオフで背表紙をみて手にとった。町でいちばんの美女というタイトルに女の写真をあえて使っているのが挑戦的。それもボンレスハムみたいな中年女というのがいい。

酔っぱらうのが私の仕事だった。救いのない日々、私は悲しみの中に溺れながら性愛に耽っていた。倦怠や愚劣さから免れるために。私にとっての生とは、なにものも求めないことなのだ。卑猥で好色で下品な売女どもと酒を飲んでファックする、カリフォルニア1の狂人作家……それが私である。バーで、路地で、競馬場で絡まる淫靡な視線と刹那的な愛。伝説となったカルト作家の名短編集!

私小説なのかとおもいながら読みすすめていたら、15センチというとんでもないファンタジーともなんともいえぬ短編にいきあい、まったく胸糞わるく吐き気をもよおすような物凄い話で、そこからはずぶずぶとブコウスキーの深みに足をとられてどっぷり、なんだってこんな本を買ってしまったんだろうとしんそこ後悔しながらも読み終えた。この蒸し暑さにブコウスキーなんて、頭のなかになにかがわいてしまいそうな組み合わせ。食欲は確実に失せる。ちなみに15センチという話は、結婚した女が魔女であり、彼女にいわれるがままダイエットに励むうちにきづいたら縦横に縮んでしまっており、身長15センチになってしまったという内容なのだけれど、殿方を15センチに縮めてなんの用にするのかと思いきや、ファックの用にするので、そこのところで通勤の電車で卒倒しそうになってしまった。
訳者の青野氏があとがきのさいごに書いたことばがわたしのいまの気分にいかにもぴったりくる。
……じゃあな、チャールズ、とうぶんあんたの顔はみたくないよ。
とうぶんはごめんだけれど、ほとぼりが冷めたらまた読んでしまうだろうのがおそろしい。