まみ めも

つむじまがりといわれます

耳そぎ饅頭

耳そぎ饅頭
高熱が続いた息子氏であったが六日目の朝にようやく平熱にさがった。念のため義母に子守りをお願いし、朝一番で筈氏に病院へ連れてってもらうことにして出社した。これでやっと産休にはいる。前日のまっしろな景色が嘘のようにあたたかくなるという天気予報をラジオでやっており、久しぶりに見る遊歩道の白梅もずいぶんと咲いて、息子氏の塩梅もよさそうであるし、スピッツなんぞ聴きながらそれはそれはフンワカした気持ちで過ごしていたのだったが、病院で血液検査をやった結果が思わしくないという連絡がきて一挙にあおざめてしまった。ちびまる子ちゃんみたいに顔に縦線がサーッとおりてきた。筈氏に確認の電話をしてみると、CRPが14あるので点滴をうけることになったという。しらべると平静は0〜0.3でおさまるものらしく、15をこえると重篤感染症であるとネットの神様がいうのでびっくりした。ともかく高熱はおさまっているのでいったん自宅に戻るが明朝までに熱発したら即入院というかたちになってしまった。家に帰ると病院で採血も点滴もやられて左腕にぺたぺたとキャラクターの描かれた止血シールを貼った息子氏が疲れた顔で義母とテレビジョンをみていた。結局そのまま熱はでなかった。なにかのときのためにお医者から紹介状をあずかって、二日後の土曜に実家にやってきた。
はくたかの車中では筈氏が息子氏を抱きとおしで寝かしてくれた。そのうち筈氏も目をつむってウトウトするらしかったので鞄から町田康を取り出してふんふん鼻息でわらいのガス抜きをしつつ読んでいたが、ふと通路をはさんだあちらの席をのぞくと筈氏はねむっていなかったのでうす笑いをみられて少々きまりの悪いおもいがした。あとがきによると、この本は偏屈が世間の輪のなかにたち戻ろうとした記録ということらしい。読んでみなくてもわかるが町田康の偏屈ぶりったらないので、世間の輪のなかであるところのディズニーランドやミュージカルに飛びこんで、驚くなかれこれを肯定礼讃するんだけれども、その実まったく異質なまんまでいる。その異質さが徹底的に丁重に世間さまを踏みつけにしてわらいに変えてしまう。こんだけぐわっと異質なひとも珍しい。