まみ めも

つむじまがりといわれます

黒いハンカチ

黒いハンカチ (創元推理文庫)

黒いハンカチ (創元推理文庫)

前々から、配偶者のことをなんと書いたものか迷走しており、主人なんてのは癪にさわるし、夫というのもぴんとこない、相方なんて芸人めいてるし、ハズ?いけすかない、ふだんは名前で呼んでいるんだから名前が一番しっくりするに決まっているが、名前をおおっぴらにするのも躊躇われる。そんなこんなで筈氏などと書いてお茶を濁していたが、それもなんだか気に入らずむず痒い気分になってきて、もう中年なのだからある程度のことは我慢してみんければと夫なんて書いてちょっと剣呑に感じておった今日この頃、この小説を読んでみたらおそろしくストンと腑に落ちる単語をみいだして気分がよい。こんな便利な単語があったか。その単語についてはおいおいわかるであろ、と焦らしておく。
小沼丹は、犬のアンソロジーではじめてエッセイを読んで、去勢した犬の性別をきかれてheでもsheでもなくitですと返すとぼけ具合を好ましくおもっていたら、庄野潤三のせきれいに小沼丹が友人として登場、酔っぱらって自分の帽子を隠して素面のときに一生懸命さがしてみたりするのがあんまりチャーミングなので、ブックオフオンラインで検索して購入。女教師ニシ・アズマを主人公にした連作の推理ものだけれど、たとえば男が女を殺したようなときに、そのふたりの関係性についてあえて触れずにぼかして済ましてしまう、そんなすっぱりした洒脱さが小沼丹の魅力だなあとおもいながら読んだ。
セイちゃんは、最近65ピースのアンパンマンのジグソーパズルをひとりで仕上げられるようになり、その達成感がよほどうれしいとみえて朝に夕に飽きることなくやっている。はじめて完成させたときには興奮してアンパンチを超高速で連発していた。手に持ったピースをすっと滑らせて嵌めこむ手つきは若干二歳ながらなかなか堂に入っており、碁でもやらしたらさまになるのではないかと考えたりする。碁といえば、鉢にはいった碁石のなめらかにひんやりした感触の心地よさだけはやたらはっきりと記憶にのこっており、あのなかに手をうずめ、ときに舐めてみたりしたような気もするのだが、舐めたほうはひょっとしたらなにかの小説か随筆で読んで気に入った話を勝手にじぶんの経験にすり替えているのかもしれない。