家から十分ほど歩いたところに図書館があることを知った。ここに暮らして丸四年が経つというのに、駅とは反対の方角のすこし奥まったところにあるもんでちっとも気づかなかった。それで、思い立ってでかけてみたら休館日、翌日でなおしてさっそく利用登録をし、本棚をぐるりと見渡す。ひと部屋だけのちんまりした図書館で、小学校や保育園が近いせいか児童書の低い本棚が半分ほどを占めて、ベビーベッドもあるし、ビッグサイズの絵本もあって(本当にでかい)、いい具合に力が抜けている感じ。分類もテキトーで、エッセイと書いてあるところに小説もなにも一緒くたになっていた。二週間の期限でどれほど読めるかわからなかったので、軽そうなものを二冊えらんで、借りてきた。わたしが図書館というもんから離れているあいだに、図書館にはIT革命が押し寄せており、書籍はすべてバーコード管理、裏表紙をめくったところのポケットも図書カードもなくなり、もちろん借り出しの履歴もわからない。本を借りてみて、図書カードにいつも名前のあるアノ子と恋に落ちる、というジブリな展開はもはやあり得ない。いや、そんなもんもともとあり得ないに限りなく近いことだけれど、まったく可能性がなくなってみて、限りなくゼロにちかいわずかの可能性でぎゅうぎゅうで妄想していたということが知れた。
- 作者: イアンマキューアン,Ian McEwan,真野泰
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
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ピーターはまた、胃のあたりをしめつけられるような感じを覚えました。それは冷たい、落ちていくような感覚です。ひざからすこし力が抜けているのを感じます。
これは、ピーターが冒険のなかで恋に落ちるときの描写。恋って、落ちると浮くが混在した、妙なもんだよなあ。