まみ めも

つむじまがりといわれます

星と月は天の穴

金曜は、友達が退職するので送別会だった。大学の学科の同級生で、わたしは大学院にいったのでおくれて入社したが、大学のときはさんざん飲んだくれ、大学の付属牧場の泊まり込み実習はいつも同部屋だったし、彼女が胃潰瘍の痛みでのたうっているときには手を握った。いまの会社に十年つとめて、妊娠中も別居婚でがんばっていたが、こどもがうまれて、どうしようもなくなって、転職先も決まったので辞めることにしたらしい。みんなから寄せ書きをわたしたら、ぽろぽろと涙を流していた。こんなときにしっかり泣ける彼女がまぶしい。

星と月は天の穴 (講談社文庫)

星と月は天の穴 (講談社文庫)

池内紀の恋愛読本で紹介されていたのを図書館で予約。なまなましくてびっくり。フォントの小さい古い文庫でよかった。こそこそと読む。池内紀を読むような人にとっては、実地の参考にはならなそうな内容。女子大生と恋愛ともつかぬまじわりを持つ中年の作家の話で、どうしたって主人公は吉行淳之介の風貌を描いてしまう。入れ歯のエピソードは、まえに苺をかじる短編にもあったし、吉行淳之介も総か部分かわからないが入れ歯だったのかも。お酒を飲んだあとで女の子が失禁したのか股ぐらを濡らしたり、連れ込み宿で、部屋の片隅に掃き残されている陰毛と埃をみて欲情したり、どれも吉行淳之介の体験ではないかと思って、勝手にどきどきした。

「あたしは、まだ何にも知らないんだもの。まだ、いろいろ夢があるのに」
「夢は、結局夢だよ」
「だって、夢が夢だということを、まだ知らないんだもの」

こんなことを吉行淳之介がいったら、みんな夢中になるんだろうな。