まみ めも

つむじまがりといわれます

ゴーン・ベイビー・ゴーン

セイちゃんは、保育参加をやって里心でもついたのかなんとはなしにアンニュイ、朝のベッドで、きょうオイクエンいく?セイゾークン、ゲンキナイの、と訴えてくる。脈絡なくいきなり泣き出したり、自分でも行き場のないユーウツを持て余している様子なので、いつもよりすこしだけ早く迎えにあがり、ぶらぶらと夕焼けにむかって歩く。ぎりぎりの下弦の月をセイちゃんがみつけ、それをときどき確かめる。夕陽に照らされた飛行機が、発光体のようにヒコーキ雲をつくって音もなく空を滑りおちていく。セイちゃんに指さして示してやって、交差点に突っ立って見上げる。あんまり見上げてひっくり返っちゃいそうだねとセイちゃんに声を掛けると、ふいにアスファルトに膝をかかえて座りこんで、かーちゃんもどうぞという、ありがとうと礼だけ言って、大人は首を痛くしたまま眺める。自転車の親子が不思議そうに振り返りながら通り過ぎた。

ゴーン・ベイビー・ゴーン [DVD]

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午後のロードショーでやっていたのを録画。ベン・アフレックの初監督作品であることはあとから知った。弟のケイシー・アフレックがジャージー姿の私立探偵役で主演。少女の失踪事件を題材に二転三転するハードボイルドミステリー、かと思いきや、ものさしの異なる正義が対立するという主題がもちあがって思わぬところに着地。そして着地した先はぬかるみ。徹底した暗さが印象的で、ベン・アフレックアルマゲドン、わかりやすい感動のデカ盛りサービスというイメージが見事にひっくり返される。ケイシー・アフレックが、タフでクソまじめでナイーヴに懊悩する根暗な男にうまいことはまっとった。少女とソファーに座ってるラストシーンが秀逸。