まみ めも

つむじまがりといわれます

向田邦子全対談

関東に二度目の雪が降った朝、遊歩道の白梅のつぼみがひとつひらいていた。去年も雪の日に咲いたような気がしたら、ブログに書いてあった。去年は1/31、今年は1/28、暦はわりと忠実に推移しとるらしい。保育園帰りのセイちゃんと、木のそばに立ち止まり花を探して遊んでいたら、犬の散歩に通りすがったおばさんが、ここは日当たりが好くてあたたかいから、この梅の木はいつも早く咲くのよねえ、ウチのは全然、と言っていた。

向田邦子全対談 (文春文庫 (277‐7))

向田邦子全対談 (文春文庫 (277‐7))

阿川弘之の食味風々録に、向田邦子との対談での話がでていて、あれは食にまつわるエッセイなので、栗鼠の糞コーヒー(コピ・ルアク)、ひじきの二度めし(ウンチのなかのひじきを回収して炊いたらふっくらふんわりして超絶美味という噂など)のところを抜粋してあった。ほかのところも読んでみたくなり図書館で予約。対談相手は小野田勇、水上勉江國滋小田島雄志谷川俊太郎山藤章二吉行淳之介二子山勝治竹脇無我中川一政澤地久枝倉本聰鴨下信一阿川弘之和田誠、矢口純、矢崎泰久向田邦子は、とても感覚がするどいひとだったんだなあとおもう。対談の場でも、感覚で捉えたことにスパスパとことばをあてていく。普段使いのことばがおそろしく的確。二子山が、「平凡ななかに才能をいっぱい秘め」たひとだといっているのが、本当にぴったりする。
数字がてんでだめという向田邦子吉行淳之介の会話がいい。

[吉行] でも、7は何か健気でいいな。
[向田] 私も好きです。物干し竿を上げる道具に似ていて。4はやっぱり好きじゃなかったですね。子供の時から…。
[吉行] 3っていいね。相手を待っているって感じもあるな(笑)。8になるのをね(笑)。
[向田] 8は雪だるまみたいでかわいくて好きなんですよ。
[吉行] でもちょっと図々しいって感じがあるんだな。
[向田] なんとなくしどけないという…。
[吉行] いや、どてっとしているという。
[向田] やっぱりヒップが大きいからじゃないでしょうか。
[吉行] 2が狡いっていうのはいいよね。
[向田] 2を書いた先生が必ずふにゃっと飾りを付けて、わざとスワンみたいにして、安っぽかったんですね。
[吉行] なるほど。

算数ができないのも才能なのよという平野レミのことばがすごく好きなんだけれど、まさしくそんな感じでほほえましい。主観でとらえる数字たち。ある意味数字を蹂躙しとる。あとは、

宇宙というのは、絶対に端があって木綿ごしのお豆腐の端っこの堅くなっているという感じがする

というのもものすごい名言。コンクリートではなく豆腐、豆腐でも絹ごしではなく木綿ごしというあたりに、向田邦子の宇宙の端っこを信じる気持ちがあらわれていて、いいなあ。ちなみに豆腐は、西洋からすると非常に東洋的なたべもので、精神がこもっている感じがあるらしい。精神的に参っているときには豆腐を食べよう。