まみ めも

つむじまがりといわれます

千年往来

わたしは自他ともに認める悪筆で、ひと文字ひと文字のまとまりがなく、文字を構成する線や点の部分がそれぞれ違う方向性でてんでばらばらに文字をやろうとしている。いい中年がこんな情けない字でよいものかと、前々から日ペンの美子ちゃんやユーキャンのペン字講座が気になっていたが、ついに、ペン字練習帳なるものを買ってみちみちと練習に勤しむことにした。姿勢やペンの握り方、はじめはたての線、横の線、らせん、じぐざぐ、それからあいうえおとお手本をなぞってゆく。この陰気な作業がなんだかたのしい。背筋をのばして無心でペンを握る。ひらがなの曲線の色気。美しい字というのはなかなか大胆な構図をしている。なんだかグラビア女優みたいに見える。檀蜜だってなんのその。わたしがこれまで書いていた字は、わたしの肉体および精神の貧相さをもろに露呈しとったにちがいない。あーなんてこと。これからは紙のうえに、あんな姿やこんな姿のひらがなを陳列し、文字くらいはセクシーにいきたいなと思っている。

千年往来

千年往来

たしか岸本佐知子のおすすめだったと思うが、図書館で予約。吉田知子という人の小説ははじめて読んだ。はっきり言って手に負えなかった。なんたって登場人物も年代もあっちへいったりこっちにきたり、それこそ千年ぶん往来してくれるので、脳みそをはげしく揺さぶられてしまう。脚本のように人物表が一覧されていればわかりやすいには違いないが、そんなことしたらおそろしく興醒めるし、読み直せばもう少しすっきり整理ができそうだがなんだか読み直す元気を奮い起こせない内容なので、参ってしまう。宇宙のてっぺんから虫眼鏡でこの世のすべてのアリンコを等しく眺めているような途方なさ。そして、自分が宇宙のすみっこでぼんやり冴えない顔で佇んでいるのが、虫眼鏡をとおしてよーく見えた。