まみ めも

つむじまがりといわれます

いつか読書する日

日曜は友人の家にお邪魔していたら、急に日が翳り、ふとみたら四階の窓から見える東の空が真っ黒になって、雨がくるのかと慌しく荷物をまとめて帰ってみたが、夜になってニュースで煙霧という現象だったと知った。地表の塵芥が巻き上げられたとかで、ニュースの写真はネバーエンディングストーリーで虚無が迫ってくるときのような感じに似てちょっとした終末感を醸しており、びびるような、でも、なんとなく口をぽかんとあけてぼんやりしてしまう。わたしは地下鉄の車内で煙がでても座り続けるタイプの人間とおもう。帰り道は風がピューピューつめたく、電車に乗ると、ねむたげなセイちゃんが膝のうえで甘ったれてホカホカの手で頬を触るので、こちらがうとうとした。

いつか読書する日 [DVD]

いつか読書する日 [DVD]

川本三郎の鉄道本で知って図書館で予約。順番待ちなしで借りられた。DVDのパッケージには「その恋は、毎朝配達される。」というキャッチフレーズ。実写版おとなのジブリ。田中裕子演じる中年の独身女性、朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジうちをやり、ラジオのリクエストは「雨の日と月曜日は」、家では本に耽り、身にまとう洋服はベージュ、なんだか二十年後の自分をみているように見事にくすんでいる。なんで結婚しないの、と小母さんにきかれ、人に対する気持ちの量が足りてないの、と答えるシーンは、妙に共感してしまった。そのくせ、薄情なわたしが結婚してこどももいるのは、足りてない気持ちの部分を、妊娠と分娩で身体を張ったというので勘弁してもらっている気がする。あと、夢はないの、ときかれたときに、町中の人に牛乳を配りたいな、と答える田中裕子のすばらしさったらなかった。エンドロールは、本棚がうつるのだが、一時停止して背表紙をいちいち書き留めておきたいようなラインナップで、この本を揃える作業はたのしかっただろうなと思った。最近は図書館がマイ本棚なので、家の本棚の新陳代謝がおちているが、二十年後の本棚のことを考えてみたら、確実に残っていそうなものは、内田百間ブコウスキー江國滋久生十蘭カフカ、なんとなく本棚もくすんだ感じに仕上がりそうだ。ちょっとピンクな感じの演出に俵万智を潜ませておくつもり。