まみ めも

つむじまがりといわれます

温泉旅日記

台風といっしょに夏の残りもぬぐわれていった。帰り道、こないだまで照りつけるようだった西陽が、夜の入り口、さわやかな夕焼けに染まって、思いきり息を吸いこみたくなる。雲がしましまに流れて、こんながらのワンピースがあったら素敵だけど、着こなせないなと埒ないことを考える。夜、布団にはいるまえに窓から空を見上げたら、月明かりが透き通って、光がまっすぐ自分にさしてくる。かぐや姫だったら月に帰ってしまうし、マイケル・ジャクソンだったらスリラーになっているところだが、一介の主婦につきそのまま帰宅。

温泉旅日記

温泉旅日記

下田にもっていくつもりで図書館で予約した本は、平野レミの旅日記、バナナの皮、池内紀の温泉旅日記。下田にもっていき損なったのを、も一度予約して、通勤、会社の昼休み、こどもらの昼寝の合間、ちょこちょこと読む。池内紀が「精神の不衛生は肉体の衛生で埋め合わせる」ということで、各地の温泉場をめぐる。よほど精神的に不衛生なのではないかと心配になるぐらい湯に浸かりまくっていてうらやましい。池内紀は、カフカの訳がもうわたしは池内訳でなくてはと思うぐらいカフカにしっくりしてしまっている。池内紀自身の文章をまとまって読むのははじめてだったが、わたしの凹凸を隈なくふちどってくれる過不足のなさ。下手したら運命のひとと勘違いしかねないので注意が必要。

湯の中にとどまっている間の、あの中空に浮いたような、やさしくやわらかい母胎に帰ったような、あの感覚ばかりは何にも代えがたいのだ。