知らない間に台風がかすめていたとかで、風が吹いたらしく、水曜の朝、門扉をあけたらアスファルトに金木犀の花が散らばって小紋柄のようだ。ここのところ金木犀のにおいがそこら中に立ちこめてむせかえるみたいだったが、これですこし落ち着いてくれるかもしれない。においだ瞬間にすり抜けるぐらいの濃度が一番ときめく。
宿六は、結膜炎の点眼でアレルギーを起こし、白眼の充血はなはだしかったが、今度は糸状角膜炎になり、目医者で病巣をべりべりと剥がして、血の涙を流したらしい。視界もきかず、出勤停止になってしまった。危ないので外にも出られず、家のなかで洗濯に精を出してみたり、こどもの洋服の名前つけをやってくれたり、あとはテレビも疲れるので枝雀をきいているらしい。仕事から帰ったら、夕飯の支度に箸やスプーンやコップが並べてあった。並べてもらった箸をしまい、フォークを出して、ミートソースのスパゲティをみんなで啜る。
- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
- 発売日: 2012/05/09
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ブシェミは、オダギリジョーを異様にしたような感じだけれど、なんだか、神様のレ点にぴったりするような男かもしれない。