ピラミッド 5000年の嘘

宿六は数字がてんでだめで、平野レミにいわせると、算数ができない才能がある部類。中途半端にできてしまうよりはとことんできないほうがいい。科学というより、オカルトめいたものに興味があるらしく、年明けに「六月に糸魚川にいきたい」と言い出したのは、つちのこ探検隊というイベントに参加したいらしい。誘う相手はひとりしか思いつかない。なん年か前、いっしょに川釣りにでかけて、ついた先の河原でテントを組み立てる段になって、ふたりしてあーでもない、こーでもない、と取扱説明書の図をぐるぐる回転させていて、こらだめだと思ったのを覚えている。しかし、彼らはスピリチュアルの才能は持ち合わせているようで、かたやピンクのUFOを見たかと思えば、一方は窓のサッシの隙間からぺらぺらの薄いおじさんが部屋の中にはいってくるのを見たらしい。

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その宿六が、どうしても見せたいといって借りてきた。宿六は映画館でみたらしく、やたら興奮して、ピラミッドはどんな形か知ってる？四角錐じゃないんだよ、その答えはこの映画をみたらわかる、という具合に浮き足立ち、こちらの気持ちを澱ませてくれる。なんとなく懐疑的な気持ちでみてしまい、いけなかった。こういうのは、スピリチュアルな気持ちに染まってみなければいけなかった。