まみ めも

つむじまがりといわれます

玉子ふわふわ

朝はわたしとフクちゃんが先に家をでて、セイちゃんはお父ちゃんと花に水やりをしたりごみ出しをしたりしてあとからいく。こないだ、仕事の最中にメールがきて、セイちゃんが朝、桜の花を拾って、げた箱にあるので帰りに忘れないでねとあった。お迎えにいくと、セイちゃんはちゃんと覚えていて、下駄箱から取り出したメモ紙に挟んだ桜をそっとひらく。ハートリボンちゃんておなまえなの、と教えてくれた。まるのままで落ちた花らしく、メモに挟まれて萎れていたのだが、それをみてセイちゃんも萎れたようにがっかりしていたので、萎れてもきれいだよと慰める。たからものの缶にいれたらいいよというと、ぱっと顔をあかるくした。資生堂のクッキーがはいっていたあかいバラ模様の浮き出た缶を、セイちゃんはたからもの入れにしていて、園庭でひろったというハートの形の石と、親戚のおねえちゃんが書いてくれたおてがみなんかがしまってある。ハートの石を拾ったときに、ポケットにいれていて、ときどき見せてくれていたのだが、いつか落とすかもしれないからと空の缶をあげたらすごくよろこんだ。フクちゃんには、資生堂の石鹸の空き缶をあげた。こちらはミニカーがしまってある。フクちゃんは、だいじなものというよりは、しまうという行為のほうが目的のようなので中身はなんでもよいらしい。いま、フクちゃんのたからものは、ぽぽちゃんと呼んでいるあかちゃん人形で、フクちゃんがうまれたときに、セイちゃんがすごくあかちゃんのお世話をしたがったので、買ったのだった。わが家のこどもたちは男の子ふたりだが、なかなか母性的なところがある。宿六は茶碗も洗うし掃除も洗濯もするしなので、y染色体になんかそういうのが搭載されているのかもしれない。わたしには家庭的のところはほとんどないので、女児をうんだらものすごいじゃじゃ馬が出てくる気がする。

玉子ふわふわ (ちくま文庫)

玉子ふわふわ (ちくま文庫)

春 深尾 須磨子
卵料理 森 茉莉
東京の空の下オムレツのにおいは流れる 石井 好子
たべものの話 続 福島 慶子
久里四郎さんの店 三宅 艶子
フライパン 森田 たま
玉子料理 中里 恒子
美味さ 住井 すゑ
富士日記より 武田 百合子
巴里日記より 林 芙美子
靖国神社のお祭り 網野 菊
卵のスケッチ 池波 正太郎
目玉焼きかけご飯 東海林 さだお
目玉焼の正しい食べ方 伊丹 十三
食べる楽み 吉田 健一
温泉玉子の冒険 嵐山 光三郎
たまごの中の中 山本 精一
玉子のつくだ煮 池田 満寿夫
茶碗蒸 北大路 魯山人
卵とわたし 向田 邦子
おうい卵やあい 色川 武大
隠里の卵とモミジの老樹 田村 隆一
地玉子有り〼 神吉 拓郎
みそかつ 細馬 宏通
卵かけごはん、きみだけ。 犬養 裕美子
早起きトマトと目玉焼き 堀井 和子
風邪ひきの湯豆腐卵 津田 晴美
バーンズの至芸 ベーコン・エッグ 田中 英一
フォロー・ミー』の中の卵に… 熊井 明子
ぜいたくのたのしみ 田辺 聖子
落ち込んだときは 松浦 弥太郎
金沢式の玉子焼き 室生 朝子
たまごの不思議 筒井 ともみ
感応を頼りに 辰巳 芳子
ふわふわ 林 望
玉子の雪 村井 弦斎
安堵 卵のふわふわより 宇江佐 真理
貧乏サヴァランでたまごについて書いた森茉莉の文章があまりによかったので借りた。川本三郎が、種村季弘澁澤龍彦は好きなことだけを書いていてケチをつけないところがいいからそれに習っているといっていたが、好物について書く文のもつ踊るような、前のめりの愛情。北山耕平を読んで、煩悩まみれの自分を羞じたばかりであったが、こういうときに東海林さだおを読むとほっとする。自分の側のシーソーにお相撲さんでも乗ってもらったような心強さ。

弱火で熱したフライパンにたっぷりバターを入れる。大さじ山盛り一杯。
すぐに卵をジュッと落とす。
目玉焼きだから当然二個。
熱すること1分30秒。
炊きたてほかほかのご飯の上にフライパンからスルリと載せる。
そしていいですか、ここがポイントなのですが、スルリの上にもう一度バターを載せる。大きさは1センチ角ぐらい。
バターは熱すると香りが飛んでしまうので改めてバターの香りを楽しもうというわけです。
そのバターが溶けたところでその上からお醤油をタラタラタラ。できたら卵かけご飯専用のお醤油がいい。
これで完成です。さあ、やっちゃってください。

欲望にとことん忠実。からだには絶対にいけないが、まちがいなくおいしいに決まっている。そもそもわたしの二大好物が卵と米なので、そのふたつがボーイミーツガールしている時点で「ラブストーリーは突然に」でも流れ出しそうな気分。ほかにもいけないものからいけなくないものまで、卵のメニューが満載で、おなかが空いてしかたなかった。そしてお相撲さんがのらなくても大丈夫なくらい煩悩と肉体とが太ってゆく。