土曜日、布団と洗濯物をベランダにほして、週末の買い出しに歩きだしたところで、宿六がピクニックをやろうといって、車通りをひょいひょい渡ってシートを取ってきた。買い出しのついでにお茶とジュースとチキンカツ弁当にハンバーグ弁当、いくらとシーチキンのおにぎり、いなりずし、サンドイッチを買いこんで近所の公園まで歩く。ソメイヨシノはすっかり終わってしまったが、しだれ桜がちょうど見ごろ。日影に陣取るとすこし風がつめたい。みんなでシートのうえにひろげたお弁当をわける。なんにも用意がなかったので、宿六がプラスチックの蓋にハンバーグやサラダを取り分けていちいちおいてくれる。巣でぴいぴいないて餌を待っているひなの気分。食後はひなたで冷えた体をあっためた。風がふくと桜のはなびらがひらひらと舞うのを、つかまえたくて、ぼんやりうろうろするセイちゃん。中銀カプセルタワービルの一室がおかれてあるのを、こっちの窓とあっちのドアから覗きあったり、蟻の巣をつぶしたり、モニュメントによじのぼったり。ひとしきり遊んでから家に帰ってふかふかになった布団を取り込んで窓も開け放って昼寝をしたが、こどもたちは汗をかいて一時間もねなかった。それから商店街で買ったおはぎをみんなで食べておやつにした。
- 作者: 村松友視
- 出版社/メーカー: 世界文化社
- 発売日: 1998/02
- メディア: 単行本
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