11人のカウボーイ

こないだ父親が出張がてら泊りにきたときに、これからの日本は泥舟だ、金の価値は暴落して戦後よりもっとすごいことになる、と脅していった。そして、野菜を種から育ててみろと熱弁をふるうので、そのとき冷蔵庫の野菜室にあった1/2カットのかぼちゃを、いとこ煮にするときに、種をよけておいて、わたをはずし、洗って新聞紙に2日ほどくるんでおき、庭先に埋めてみた。目印に札をたてておく。セイちゃんに、おかあちゃんここにたねをうえたからね、おはなにお水あげるときに、たねにも水やりしてね、とお願いしたら、毎朝、宿六と保育園にでかける前に水をやってくれているらしい。月曜に帰ったとき、玄関わきからヒョイと覗いてみたら、嘘かまことか、緑のまるいふたばがでていて、思わずセイちゃんに、芽がでた、でてるよ、と教えたら、とてもよろこんで、自信ありげにした。そのうち次つぎと芽をだし、もう十個あまり、ふたばの先に種の殻がついていたりするのが妙にいじらしく映る。間引きするのが気の毒だが、しかたないので、今朝、いくつか引き抜いた。ぶちぶちと根っこがちぎれる感触。なんとなく血管がやぶれるのを連想してしまう。三月の終わりに買ったピンクのデージーとサクラソウは、セイちゃんが晴れた日には毎日水やりしてくれるおかげで、まだいくつか花をのこして、仲良く咲いている。でも、鉢植えなので、土曜から家をあけたら、晴れ続きで枯れてしまうだろう。通りにだしておいたら、お隣のおじいさんが水をやってくれるかもしれない。