まみ めも

つむじまがりといわれます

どくとるマンボウ航海記

月曜の朝に目が覚めたときはもう雨音が大きく聞こえていた。台風18号のことをしきりにラジオでいっている。いつもより早く家を出ることにして、セイちゃんには合羽を着せて、長靴に傘を持たせた。フクちゃんはバギーにレインカバーをつけて、やっぱり長靴で座らせる。傘にあたる雨音が大きくてバギーのフクちゃんがあれこれ話すのがちっとも聞こえない。それでもまだこどもといるうちはよかった。会社の最寄り駅でおりて、あと少し、会社の敷地に入ったところで雨脚もつよくなり、風が吹き乱れ、傘が折れ曲がり、パンツまでぐっしょりになってしまった。ロッカールームで脱いだ服をトイレでしぼったら、ぼたぼたと水が出た。ハンガーにかけてロッカールームでほしたけれど、帰りまで乾かなかった。帰りは晴れて、道路もすっかり乾いて、長靴がなんだか居心地悪そうにしていた。台風のあとの町はなんとなく好き。

どくとるマンボウ航海記 (1960年)

どくとるマンボウ航海記 (1960年)

「酔生夢死か、起死回生か。」でどくとるマンボウ航海記の冒頭にでてくるアタオコロイノナという「何だか変てこりんなもの」というような名前のマダガスカルの神様について触れていて、読みたくなったので図書館で予約。水産庁の漁業調査船照洋丸に船医として乗り込み行き当たりばったりにヨーロッパまでいって帰ってくる記録で、「私はこの本の中で、大切なこと、カンジンなことはすべて省略し、くだらぬこと、取るに足らぬこと、書いても書かなくても変りはないが書かない方がいくらかマシなことだけを書くことにした。」とあとがきにある通りの内容になっている。催涙ガス弾を船じゅうに拡散させてしまったり、とんでもないことをやっているが、いかんせんマンボウなので憎めない。
リスボンの描写。

リスボンは新旧混合した実におもむきのある色彩豊かな街である。
街には急坂が多く、ずいぶんと狭いところまで古びた市電が通っているが、特に急勾配の坂はケーブルカー式になっている。そして、どの道にもさまざまな石が敷きつめられている。パリのモンマルトル辺の石畳のようなのもあれば、こまかくうす赤い石を敷きつめた道、モザイク風に異なった色の石を敷きつめた通りもある。修理しているところを見ると、丁寧に石を並べてゆく手間閑のかかる仕事で、それだけで古い歴史の匂いがする。自分の店先の舗道の石がとれてしまったのを、そこの主人らしいのが、不規則な石をあれこれとパズルのように置きかえているのを見たとき、私はなぜとなく、ああヨーロッパに来たなと実感した。

これを読んだら、いつかリスボンにいって、いろんな色の石が敷きつめられた道を見て、ああヨーロッパに来たなと思ってみたくなった。