まみ めも

つむじまがりといわれます

羊の物語―眠くならないヒツジのアンソロジー

鼻がむずむずしてくると、春のはじまりが終わったなと思う。定点観測の白梅はもう花を落として、三角公園のわきの梅が白梅、つづいて紅梅と、ぽちりぽちりつぼみをふくらませている。ここに暮らすようになってしばらくしてから、通勤の道すがらのよその木々をながめて、日々のうつろいの中でつぼみが膨らんでいく様子を心待ちにするようになった。この気持ちを名づけるとしたら「萌える」ということになるのだと思う。あたらしいジャンルの感情に、三十路で出会うこともあるのだから、歳をとるのは面白い。通勤で通る遊歩道に、木蓮辛夷があるともっといいなあ。木蓮の花がめくれるように落ちるのをみると、風が季節のページを繰っているみたいでうれしい。

図書館の貸出しカウンターのそばに企画コーナーがあり、1月の終わりに行ったときは年初で干支の羊本が陳列されていた。「眠くならないヒツジのアンソロジー」という副題にひかれてひらいてみたら、独特なレイアウトで組まれていて、いかにも癖があって読みにくそうなのだけれど、どうして三四郎が羊の物語になるのか、さっぱり思い出せず、気になるので借りることにした。
ねむり羊への伝言 工藤 直子/著
星 アルフォンス・ドーデー/著 桜田 佐/訳
暑い午後の寒いイメージ 北村 太郎/著
スキタイの羊 渋沢 竜彦/著
羊の腸のスープ 藤原 新也/著
三四郎 夏目 漱石/著
羊イメージ群とキリスト教 山下 正男/著
ジンギスカンの末裔になってみよう 檀 一雄/著
牧羊祭 みや こうせい/著
カルパチアの城 ジュール・ヴェルヌ/著 安東 次男/訳
幸福 アントン・チェーホフ/著 松下 裕/訳
頭突き羊の物語 マーク・トウェイン/著 坂下 昇/訳
羊腸人類 安部 公房/著
羊のはなし 幸田 露伴/著
「ねむり羊への伝言」「星」「頭突き羊の物語」がよかった。真ん中あたりにヒツジとヤギの違いをアトラスでまとめてあった。

ねむり羊が飛ぶごとに やわらかい毛のあいだから「ねむり」がこぼれ世界にしみていく
「ねむり羊への伝言」

次に眠れない夜には羊を空に飛ばしてみよう。