土曜の朝は隔週で健診。おなかはいよいよせり出して、食べても食べなくても胃のあたりがむかついて、すこし食べすぎると戻してしまう。それでも着々と中身は育ち、2週間のあいだに200グラム増えていた。通っている病院はお産をやらないところで、通っている患者さんもおばあちゃんやおばさんのほうが圧倒的に多い。病院は昭和の名残をとどめていて、入口はガラス一面で薄日が差し、みどりかピンクの電話があったであろうボックスになった一画があったり(電話はもうない)、看護師さんが詰めている検査室の入口に、「洗濯物干してます」と手書きの札が出ていたりする。おばあさんに近い看護師さんの採血はあまりうまくないし、待合室の暖房は効きが弱くて足元が冷えるし、ところどころ頼りないのだけれど、その点も含めて居心地のよい感じがする。帰り道のいなげやで、牛乳屋さんの珈琲をホットで一杯飲むと、冷えたからだに糖分と熱がじんわりと気持ちいい。
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1984/10
- メディア: 単行本
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