猫のあしあと

口角炎と口内炎と口唇炎が同時多発テロしていて、口もとの緊迫感が否応なしで高まっている。スティックに切った人参を明太子味のディップにつけて齧ったら、まんまと口内炎もろとも齧ってしまった。なんて迂闊なことを。夕飯はセイちゃんのリクエストでおでん。今年のおでんもこれが最後かもしれない。スーパーで買ってきたジバニャンの蒲鉾も浮かべた。地縛霊の出汁がしみでている。練りものの苦手なフクちゃんは餅入り巾着とこんにゃくしか食べないが、おでんは好きらしい。

猫のあしあと

遊びにいった先の家の猫がなつっこくて、ナデナデさせてもらった日の午後に図書館にいったら書棚の町田康「猫のあしあと」が目に飛び込んできて、こういうのは、みつけたというのか、みつかっちゃったというのか、とにかく借りるしかない感じで借りた。久しぶりの町田康。町田康のもとにやってきた猫たちの話。有給休暇をとった日にドーナツショップでコーヒーをすすりながら読んでいたら最後は泣けてしかたなかった。猫のいのちを預かっているという町田康、預かりものを本当にいとしんでいて、痛々しいほど切実な思いが町田康のお経のような文章のリズムにあふれていて、なんだかすごくありがたいものを頂戴した気になった。