鍋にいっぱいのカレーを煮込み、なくなっていく一週間。玉ねぎにひき肉、人参、かぼちゃ、じゃがいも、スキムミルクにプルーンを入れた。具材がとろけて渾然一体となった汁を麦ごはんにたっぷりかけて、らっきょうと福神漬け、セロリのピクルスを添える。今回の付け合わせはマカロニサラダ。カレーライスのあとに、ライオネスコーヒーのキャンデーを舐める。大学生のころに通っていたカレー屋では、レジでお金を払うときにライオネスコーヒーのキャンデーをひとつくれた。そのころから、食後にコーヒー代わりに舐めるコーヒー味のキャンデーがなんとなく気に入っている。
- 作者: 平川克美,高原秀
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: 単行本
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私たちの「現在」は、「過去」を捨て去ってまで獲得するに値するものであったのか。時代に追い越され、風景の片隅に取り残された路地裏の生活が語りかけてくるものを綴る。『朝日新聞 be』『ケトル』連載に加筆し書籍化。
「魚」というタイトルの詩が引用されている。立原道造の「魚の話」という詩が好きで、なんとなく魚のでてくる詩はそれだけでうれしい。
魚たちも 泳ぎ手たちも 船も
水のかたちを変える。
水はやさしくて 動かない
触れてくるもののためにしか。
魚は進む
手袋の中の指のように。
泳ぎ手はゆっくりと踊る
そして帆は 息をつく。
だが やさしい水は 動くのだ
触れてくるもののためになら。
魚のため 泳ぎ手のため 船のため。
水はそれらを支えてやり
そしてそれらを押し流す。
読んでいると、川本三郎や向田邦子の名前も出てきて、なんだか海外旅行先で見知った人に出会ったような思いがけないよろこびと気恥ずかしさを味わった。