少し前に、セイちゃんが女の子から手紙をもらってきた。まだまだ話しことばと書きことばが揺らいでいるらしく、「でいすきだよ」と書いてある。一筆箋二枚のかわいらしい手紙の中に「でいすきだよ」が三回あった。おおちのひとみんなでいすきだよ、と書いてあって、うれしさもひとしお。セイちゃんも張り切ってお返事をしたためていた。いけてる封筒をさがしにいこう、といって、100円均一にいったら、ハートがたくさん舞うピンクの封筒を選んだ。ラブリー男子。夕飯を片付けた食卓でせっせとなにか書いているのでのぞいたら隠そうとする、なあに?ときくと、ないしょだよといって見せてくれたのは、女の子の名前とハートとリボンをつけた女の子の顔の羅列で、好きな女の子の名前をもりもりと書いている。よろしいよろしい、悶々とした思いのはけ口が文字というところが大いに気に入った。
- 作者: 浅生ハルミン
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/01/23
- メディア: 文庫
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昼間、家から出ていった猫はいったいどこへ行っているのか? もしかしたら猫は飼い主には見せたことがないような、あられもない格好をしていたりするのかもしれない…。著者は町にいる猫を探してあとをつけてみることにした。
猫がおしりかましてくる表紙がいい。猫はやっぱり後ろ姿を向けてくるところがいいので、浅生ハルミンも、すぐになついてくるような猫はいまいちというようなことをいっているけれど、それはすごくよくわかる。猫に限らず、すぐになつかれるとものすごく不安になるというか、あやしんでしまって、自己評価の低さゆえなのだけれど、好きになられてもまっすぐ受け入れられないかなしさを、猫はうまいことスルリとかわしてくれる距離感がたまらない。