まみ めも

つむじまがりといわれます

うっとり、チョコレート

おやしらずを抜いたあとがなんだかすっきりしなくていまいち調子が出ない。痛みがあるわけでもないのだけれどなんとなく生臭さが居座って、何を食べてもおいしくないしビールを飲んでも気分がよくない。すっきりしたくてうがいや歯磨きを何度もするけれど肝心のところは歯ブラシをあてるわけにもいかず、どうにもならん。抜歯から3日たって、おそるおそるべろの先で穴の中をつついてみるとじんわり湿ってぬくくて、きっと胎内というのはこんな具合の居心地にちがいないと思った。全身をこのぬくもりで浸されていたはずのことはなにも思い出せないけれど、体の感覚が懐かしさを教えてくれた。

ト。

浅田次郎伊藤比呂美江國香織片岡義男中島らも村上春樹ら38人の名手による、身もこころもとろけるチョコレートエッセイ集。バレンタインの切なく、ほろ苦い思い出も収録。
三つの嗜好品 p7-12 森 茉莉
よその女 p13-18 江國 香織
チョコレートモンスターのプレゼント p19-22 溝口シュテルツ真帆
バレンタイン傷 p23-25 大宮 エリー
チョコと鼻血 p26-29 中島 らも
「義理チョコ」とは何か p30-34 浅田 次郎
I WANT義理チョコ p35-40 東海林 さだお
一途な瞳のバレンタイン p41-47 青木 奈緒
チョコレート p48-50 宮下 奈都
ヘフティのチョコレート3000円 p51-57 角田 光代
聖バレンタイン・デーの切り干し大根 p58-59 村上 春樹
チョコレート慕情 p60-64 阿刀田 高
玩具として買うには面白い p65-73 片岡 義男
チョコレート p74-80 辻 静雄
チョコレート−le chocolat− p81-83 鹿島 茂
幸せショコラの原風景 p84-87 小椋 三嘉
燈火節のクレープ p88-91 増田 れい子
チョコレートとワイン p92- 桂
美味・珍味・奇味・怪味・媚味・魔味・幻味・幼味・妖味・天味 p109-114 開高 健
ホットチョコレート p115-117 酒井 順子
真夜中のチョコレートケーキ p118-119 伊藤 まさこ
限りなく上品で甘美な風味。余韻をいつまでも楽しみたい…。チョコレートって、大人の楽しみかも。 p120-122 渡辺 満里奈
筋金入りのチョコジャンキー p123-129 土器 典美
神様の食べもの p130-133 楠田 枝里子
チョコレート p134-139 竹中 郁
チョコレートの系譜 p140-147 田沢 竜次
チョココロネ p148-152 宮内 悠介
チョコレートと私 p153-159 町田 忍
バレンタインデー p160-163 初見 健一
「ホワイトデー」の話 p164-170 伊集院 光
刑務所の中 p171-173 平松 洋子
長友 p174-176 穂村 弘
ある日の私とチョコレート p177-180 鈴木 いづみ
甘い恋 p181-185 西 加奈子
本命のチョコ食いあかす犬心。 p186-189 伊藤 比呂美
ぼくのお母さん p190-194 川上 未映子
狼とチョコレート p195-197 小川 未明

「小説家のメニュー」で読んだばかりの開高健のショコラの記述に再会した。ベルギーのダーム・ブランシュもそそるけれどみつまめのところがものすごくいい。開高健は、釣りに出たときに、釣った魚を入れておく船の氷水のタンクにみつまめの缶詰を放りこんで冷やしておき、船の上で食べたのだという。開高健の文章を読んでいたら、みつまめがとても情緒的な食べものに思えてきて、ソリッドなあの四角をかじらなければやっていけない気がして、買ってきた。開高健のお墨付きの榮太樓のみつまめ。黒みつがついている。釣り船に乗る予定はないので、冷蔵庫で冷やして、昼休みに会社のデスクで食べた。海の上で陽に照らされて食べたらそれはそれは効きそうだ。いつか暑い時期に船に乗るときには、みつまめを忘れずに持っていきたい。なんならみつまめのために船に乗ってもいい。