まみ めも

つむじまがりといわれます

美味しいか恋しいか

朝の電車でたまらなくお腹がすいてきて、これは昼までもたないと思って、駅前のデイリーヤマザキでおにぎりでも買おうというつもりでいたら乗り過ごしてしまった。乗り越しの運賃は190円。勤め先までの道にコンビニはない。タイムカードを切って着替えをすませ、荷物を置いてから、少し離れた建物にあるパンの自販機まで財布を握りしめていく。前のめり。ハムチーズのパンにきめた、財布をさぐったら一万円札と十円玉がみっつで、お金はあるのに買うことができない。茫然と立ち尽くしたのち、ハラヘリはどうにもおさまらないので建物を出て歩いて5分の回転したての売店にいき、サンドイッチを買った。空腹にまかせてボリュームサンドを買ってしまい、ぱくついたら、あとからハムカツの油脂分にもたれて苦しめられた。なかなかうまく生きられない。

美味しいか恋しいか

美味しいか恋しいか

ト。

料理と女性との忘れえぬワンシーンを綴った、物語風食べ物エッセイ。『BRIO』の3年間にわたる連載を単行本化。インテリアにもポストカードにもなる、イラストレーションカードブック付き。

安西水丸の余白の多い絵の感じと文章の漂白感はとてもあっていて、食べものもちっとも生々しくないのがかえっていい。どこまでが本当のことなんだろう、と考えると、自分のくらしだってどこまでが本当なのかよくわからなくなる。