まみ めも

つむじまがりといわれます

山の上の家

 

週末、やっとおひなさまを飾る。二階からおろしてもらった大小の箱から、道具をひとつひとつ取り出して、パンフレットの写真を見本にして並べていく。今年はカラーボックスに布をかけた上に据えた。ふーたん、おひなさますき、といってうれしそう。おにいちゃんふたりもこまごました飾りに興味津々で手伝ってくれる。おひなさまの穏やかな表情を眺めているとなごむ。

次の日の朝、ごみ出しをしたあとで近くの幼稚園の前を通ったら、めずらしく玄関に灯りがついていて、奥には七段のりっぱなひな壇が飾られていた。日の出前の薄暗い往来から眺めるひな壇は、夢のなかの眺めのようで、その残像をまぶたにいれて仕事にむかった。

山の上の家―庄野潤三の本

山の上の家―庄野潤三の本

 

 ト。

今なお多くのファンをもつ、庄野潤三。一家が暮らした生田の山の上に立つ家の風景を、豊富な写真で紹介するほか、単行本未収載の作品、全著作案内、家族の原稿などを収録する。佐伯一麦の特別寄稿も掲載。

巻頭文/佐伯一麦

私のお父さん/今村夏子(庄野潤三 長女)

父の思い出/庄野龍也(庄野潤三 長男)

庄野潤三が家族を描いたスケッチ
単行本未収録随筆(「わが文学の課題」)
単行本未収録中編小説(「青葉の笛」)
庄野潤三とその周辺 /岡崎武志
「山の上」という理想郷/上坪裕介
全著作案内/宇田智子・北條一浩・上坪裕介・島田潤一郎
短編・随筆リスト
山の上の親分さんとお上さん江/今村夏子(庄野潤三 長女)

夏葉社からとてもいい本が出ていた。隣の理想郷をだいじに読み、味わう。以下、とどめておきたいことば。

伊東静雄 「(小説というのは)手のひらで自分からふれさすった人生の断片をずうっと書き綴っていくもの」

「結局、生きることの根本は、具体的な生活の中にあるささいなものの積み重ねにあるわけで、(中略)それ一つだけをとりあげては何でもないことも書くことにより、ある大きな運命をゆっくり進むありさまが描ける」

「世の中生きている間には、いやなことやグチをこぼしたくなることも多いが、言っても仕方のないことは言わない。それより、どんな小さなことであれ、喜びの種子になるものを少しでも多く見つけて、それをたたえる。そのことによって生きる喜びを与えられ、元気づけられる。そういう生き方をしたいと思ってやってきました」

あとは、庄野潤三が夏が好きなので夏子とつけたというのはとてもいいエピソードだとおもった。