まみ めも

つむじまがりといわれます

ひとりメシの極意

六日と七日とが、ここらへんではもっとも早い日の入りだった。16:28:11の日没を二回繰り返したあとで秒刻みで夕暮れがのびていく、でも寒さはここからいよいよ深くなるという夕暮れの空に向かって歩く帰り道、冬の入り口に立っているという気持ちがする。遊歩道にはいちょうの葉がふかふかに散りつもり、ばんざいで寝るちいさな手のひらが布団からはみ出て驚くほど冷たくて、夜中に目が覚めるたびにその手のひらをにぎって温め、ふとんのなかにしまっている。

父を亡くしたことを知ったTちゃんがおいしい焼き菓子を送ってくれたのがありがたくて、たまらない気持ちでじっとしておられず、金曜は粉を買い込んでスコーンを焼いた。きなこ味、ココチョコ味、カレー&コーン味をそれぞれちいさく型抜きしまくってオーブンで焼き、粗熱がとれたのを袋詰めしてみっつの小包みにした。産後におかずを送ってくれたお礼ができないままになっていたKちゃん、やっぱりおとうさんを認知症でなくしたばかりのAちゃんにも送る。なにかを送りたい人がいるのは、いいことだな。

ひとりメシの極意 (朝日新書)

ひとりメシの極意 (朝日新書)

 

 ト。

ひとりの食事が心底楽しめれば、
人生最大の課題「孤独」もなんのその。
東海林さだお先生、初の新書で
その極意がついに明らかに――。

究極の卵かけゴハンに何度トライしたか。
定食屋のサバ味噌煮を何度採点してきたか。
立ち食いそばで、駅弁屋で、ビアホールで、
「あっちにすればよかった…」と何度悶えてきたか。
おもえばショージさんこそは、半世紀も前から
この国ナンバーワンの「ひとりメシ」の達人。
タハハ、フフフと笑ううちに、人生を楽しむ
最大の極意がなんとなく、しかし深く、わかる。

週刊朝日超長期連載の「丸かじり」をベースに、
「ひとり酒の達人」太田和彦との特別対談も収録。


特別対談【前編】メシも、酒も、ひとりが一番!
東海林さだお太田和彦
・孤高をきわめたければ居酒屋に行け
・盛り合わせを頼むのはいさぎよしとしない
・「みんなが俺をどう見てるか」問題
・「フランス人的な個人主義」「みんな憧れてはいるんですよ」
・殿さまなら「おつりはいらんよ」と

【第1章】 冒険編 いちばん手っ取り早くできる冒険が「食」だ
・丼一杯おかず無し?
・バター醤油かけごはん讃
・中華カレーマンを自作する
・復讐の蕎麦入りうどん
・シラスおろしの法則
・焼きそばにちょい足し
・オイルサーディン丼完成す
・帝国ホテルでバーガーを

【第2章】 孤独編 いじけても、ひがんでも、うまいものはうまい
・独酌決行
・午後の定食屋
・小鍋立て論
・一人生ビール
・「秋刀魚の歌」のさんまは
・魚肉ソーセージは改善すべきか
・いじけ酒
・行って楽しむ行楽弁当

【第3章】 探求編 小さいことにこだわらずに、大きいことはできない!
・ゆで卵は塩?
・オムライスの騒ぎ
・釜めし家一家離散
・カキフライに関する考察
雪見酒の法則
・茶碗蒸しの正しい食べ方
・グリンピース、コロコロ
・盆栽と料理サンプル

特別対談【後編】定食屋は風流です!
東海林さだお太田和彦
・さば味噌煮を味わえる定食屋は高級な世界のような……
高倉健には、なんといってもカツ丼がよく似合う
・「向かいの人と目が合う」「視線の交錯問題は大変です」
・六畳一間のころから仕事場と家は別
・「生活が乱れていたほうがいいんじゃないかと」「無頼派……」

【第4章】 煩悶編 「メニュー選びにクヨクヨ」は、至福の時間
・カレージルが足りないッ
・とナルト、ナルトは
・おにぎりの憂鬱
・エビ様と私
・カツカレーの正しい食べ方
・ラーメン屋観察記
・海鮮丼の悲劇
・失敗する食事

【第5章】 郷愁編 懐かしいもの、ヘンなもの大集合
・ちらし寿司の春
・さつま芋二本弁当
・懐かしの海苔だけ海苔弁
・え? シャリアピンステーキ?
・ワカメの役柄
・懐かしの喫茶店

【第6章】 快楽編 ああ! あれも、これも、ソレも食いたい!
・礼讃、生卵かけごはん
・アー、大根千六本の味噌汁
・水炊き、たまらんがや
・豆腐丸ごと一丁丼
・煮っころがしの夜
・山菜の喜び
・納豆は納豆日和に
カラスミを作ろう
・脂身食いたい
・目玉焼きかけご飯

東海林さだおを通して見る食の世界の鮮やかさよ。もう、絶対にこの冬は肉まんとカレーパンを買ってきて移植手術をやりたいし、温かいフワフワを口に頬張って三秒その感触をじっと感じるというのを断然やらねばならぬ。やるもんね。