風邪がうつったのか、気圧のせいなのか、ビールがうまくなく、やたら怠く、昨日の夜はソファで寝てしまって、なかなか起きられない。ソファから体を引き剥がすようにしてふらふら起きてみたらひと口分のビールが350缶に残っていた。ぬるくなったビールを流しこんでふとんにもぐりこむ。ひんやりとしたふとんが、体温でぬくまっていくとほっとする。
雨でどこにもいけないので、衣替えをしたり、きんぴらごぼうを炒めたり、ネット通販で肌着を買ったりして過ごす土曜日。雨がやんで、やっと虫の声が聞こえる。ビールを飲みながら(きのうよりはうまくなくない)、久しぶりにシャーデーを聴いている。秋が深くなると、おとうさんのいない一年が閉じることにうろたえてしまう。あなたのための短歌の封筒を取り出して失われていくにおいを何度も確かめてしまう。
ト。
向田邦子の膨大な蔵書から、脚本やエッセイ・小説の糧となった本、食いしん坊に贈る本などの愛読書を紹介する。本をめぐるエッセイ、単行本未収録エッセイ・対談も掲載。
もともと人の顔を覚えられない性質なのだけれど、向田邦子の顔はなかでも定着しない種類らしく、写真をみていると何人もの違う人に出会うような魅力がある。エッセイの中の文章でも、飼い猫に対する
「あとでご馳走やるからな」
「お前たち、誰も助けないことにしたからね。ドアをあけてやるから、自力で逃げな。判ったね」
みたいなぞんざいな口のききかたにどきっとする。あとでご馳走やるからな、なんて、ちょっと言ってみたくて、実はそっと声に出して読んでしまった。全然棒読みだった。