日曜日の午後、自転車をこいでいるときに、ふみちゃんが、お母ちゃんせみがないているねと教えてくれて、蝉の鳴き声に気がついた。聞こえていたはずなのにちっとも気がつかなかった。前日のまとわりつくような湿気が抜けて、ページをめくるように一気に夏だ。日なたは皮膚がじりじりするほど暑い。ふみちゃんが学校から持ち帰った苗にミニトマトが鈴なりについている。
セイゾーが担任の先生から本を借りて読んでいるのを貸してもらった。
「この世界からひとつだけ何かを消す。その代わりにあなたは1日の命を得ることができる」 余命あとわずかな30歳の郵便配達員は、陽気な悪魔からささやかれ…。
猫が話しだしたあたりから(冒頭なのだが)なんとも言えない気持ちになってそのままだった。生きるのも死ぬのもこんなに生ぬるくないと思うのはハードモードで生きてきたからなんだろうか。