まみ めも

つむじまがりといわれます

過去をもつ人

みそかの夜は、こどもたちが寝たあとでひとり鎌倉のキッチンでカズオ・イシグロを読みながら缶のスーパードライを飲んで過ごした。床暖房のスイッチが切れていて足元から冷え込んできたので、眠くなかったけれども布団にもぐりこんでこどもたちにひっついて暖をとっているうちに年が明けた。朝は六時半に起きて、着替えをすませて車で山を降り、鶴岡八幡宮に初詣で、それからスタバでお茶をした。2018年はじめて口にしたのはチャイティーラテだった。こどもたちはホットココア。お正月の休みで二キロ肥えた、同僚が四キロ増えたといっていてホッとしたけれど、増えた二キロが減るわけでもないのにどうしてホッとするのか我ながらよくわからない。正月太りというけれど、去年からも持ち越していて、万年太りの感がある。鏡の中の顔がぱんぱんに丸い。

過去をもつ人

過去をもつ人

ト。

過ぎ去ったものが厚みをまし、世界をつくりつづける。過去の新しい見方、読み方も必要になるのだろう…。新聞などに発表されたエッセイの中から、読書にかかわる61編を選び、書き下ろし「銅のしずく」を加えて単行本化。
友だちの人生  壊す人  読書という悪書  大学へ行く  新しい見方へ導く  金沢猫と黒猫  「門」と私  中都会のネオン  「銀の匙」の女性  正宗白鳥の筆鋒  城の町にあること  源泉のことば  白楽天詩集  光り輝く  壁の線  タルコフスキーの小説  素顔  教科書の世界  二つの国  誰よりも早い声

II
銅のしずく  利根川を見る人  現代詩!の世界  寺山修司の詩論  飯島耕一の詩  思考の詩情  六月の機関車  せきりゅうの花  読むときのことばは  情報のなかの私小説  親鸞  秋から春の坂道  大空の井戸  目に見える風景  全体のための一冊  ブラジルの代表作  椿姫  貝の消化  複数の風景  葡萄畑を抜けて  聖家族

III
旅  知ることの物語  卒論の想い出  芥川賞を読む  美しい本のこと  韓日・日韓辞典  国語の視野  地理の表現  頂上の人  色紙のなかへ  会話のライバル  夏への思い出  親しみのある光景  四〇年  未来のために外に出す  天気予報の都市  夜たき釣り  富永有隣の大声  夢  雨の中の道  暮らしの肖像

あとがき

荒川洋治のことばには無垢なところがあって、文脈をこえたところで伝わるものがあるのは、それが詩のことばに近いのかもしれない。詩は、波長が合わないとしんどくてなかなか読む気になれん、けど、読んでみたくなった。