まみ めも

つむじまがりといわれます

2012-01-01から1年間の記事一覧

欲望という名の電車

桜の満開と日曜日とお天気がいちどきにやってきて、ちいさく奇跡のような一日。犬の散歩に同行し、たんぼの真ん中を桜並木がのびる遊歩道であそぶ。ぼうやはたんぽぽとつくしの名前をおぼえた。ぷちぷちと手に摘んで握りしめるので手のひらがたんぽぽの黄色…

鎌倉のおばさん

桜の花の淡いいろが風景を薄ぼんやりと暮れさせるとなんだか現実感がうすれて世の中との距離がつかめなくなりちょっとした疎外感にとらわれる。出産がもうすぐやってくるというのにフワフワした気持ちになっていけない。出産はファンタジーだが痛みはリアル…

犬の話

なのはな / 幸田文 犬の話 / 小沼丹 チャンプのこと / 池内紀 押入れの主 / 群ようこ 犬はかじる / 小川洋子 隣りの犬 / 向田邦子 ガラス越しの犬 / 伊集院静 犬 / 佐藤洋子 ミミの死 / 近藤紘一 ダーキイのお産 / 江藤淳 愛犬家は旅先で出会った犬を心にか…

2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅といえば「ツァラトゥストラはかく語りき」という例のテーマ曲で、でんどんでんどん…ぱやー、と歌ってみせたら筈氏がおもいきり苦い顔をしたことがあった。もちろんツァラトゥストラはぱやーとは語らなかったとおもうが、でんどんで張りつ…

恋する惑星

ピンポンが鳴り玄関先にでてみたら見知らぬ中年男がディズニーの袋を抱えて立っている。なんだろうとぼんやり応対していると母が奥からでてきてうれしそうに荷物を受け取った。台所の食卓のうえに広げられた品はやたらファンシーな鞄で、青の地にワッペンを…

リトル・ヴォイス

急にあたたかくなって、朝、庭にでたら一気にひらいたチューリップがびらりと蕾の内部をさらけ出し一見するとなんの花だかわからないような様態を示していてぎょっとする。夕方になって気温が落ちついてきたらようやくチューリップらしい形状におさまってい…

ニホン語日記2

1992年7月から1995年9月まで、井上ひさしがニホン語にまつわる日記をとりとめなく書きつけた一冊。活字おたくっぷりが炸裂。日記なのでそのときどきのニュースや流行、たとえば悪魔ちゃん事件や筒井康隆の断筆宣言、ポケベルの流行、野茂の大リー…

私の長生き料理

宇野千代が98歳でなくなる三年前、95歳のころの本。わたしは食い意地が張っているので、こういう類の料理本をみるとなんとなく買ってしまう。百円だし。レシピ本というつもりはなくて、華やかな男性遍歴を経たお婆ちゃんは一体どんなものを食べてどんなこと…

さらば、わが愛 覇王別姫

ひとりめが5/3にうまれたときに53は素数だなあと心ひそかによろこんでおり、なんとなくふたりめは4/7に出てくるのではないかと期待していた。金曜日に健診にいったところがお医者がもういつ出てもおかしくないと言ったので勝手に気分は盛り上がって…

つゆのあとさき

銀座のカフェーの女給君江は容貌は十人並だが物言う時、「瓢の種のような歯の間から、舌の先を動かすのが一際愛くるしい」女性である。この、淫蕩だが逞しい生活力のある主人公に、パトロンの通俗作家清岡をはじめ彼女を取巻く男性の浅薄な生き方を対比させ…

カッコーの巣の上で

風呂からあがったら母親が腹のでっぱりがすこしおりてきたようだという。心なしか、腹のなかでうごうごしたときに感じる場所もちがってきたようだ。お産が近づくにつれて前回のことを思い出してきた。出産自体は痛みを伴ったものの、ファンタジーさと突き抜…

バッファロー’66

おとついの風はものすごかった。玄関先においていた牛乳配達のボックスが消えたし、庭の植木が一本根こそぎ持ちあがって傾いてしまった。浮いた根のところに乗っかってみたが復する気配なし、風が吹くたびにぎいぎいと傾いて根が浮くので心もとないったらあ…

インドへ

ブックオフオンラインで百円。表紙をめくったら一面あざやかなピンク色に目を奪われた。芝桜に似ているが、花のことはよくわからない。芝桜は実家の庭に咲いていたせいか、実家をはなれてから好きになった。つゆくさといい、芝桜といい、苔といい、地面には…

ビートルジュース

つたやで映画を借り出す。夫氏にすすめられた四本のタイトルを店員に提示して探しだしてもらうが、ブエノスアイレスというのだけみつからなかった。まえの妊娠のときは、週末は毛布をかぶってつたやで借りた映画をいくつもみたことを思い出す。オムライスや…

フィツジェラルド短編集

氷の宮殿/冬の夢/金持の御曹子/乗継ぎのための三時間/泳ぐ人たち/バビロン再訪 こないだ散歩に携帯する一冊をえらぶのに、ポケットにいれるので文庫本をとなんとなくフィツジェラルド(新潮文庫的にはフィッツジェラルドではないらしい)をつっこんだ。…

卒業

午前十時の映画祭のコマーシャルでスポット的にラストシーンだけは見ていた。ダスティン・ホフマンが花嫁と逃げ出す例のシーン。なんとなくこてこてのラブストーリーだろうとおもって気楽にかまえていたが、とんでもない映画だった。初恋のきた道は定石をす…

イージー☆ライダー

ラストシーンでバイクが大破、俯瞰になっていく構図には記憶があった。最後にはこのふたりは呆気なく理不尽な死にかたをやるんだよなあと結末を知りながらみるのはどんなもんだろうと思ったがおもしろかった。キャプテン・アメリカと呼ばれる男がまたがる星…

初恋のきた道

初恋のきた道。チャン・ツィイーがかわいいという前評判は頂戴していたものの、ここまでチャン・ツィイーがスパークしているとは思わなかった。二の句が継げないくらいにチャン・ツィイーがかわいいとしか言いようがない。逆にいえば若さはじける天下無敵の…

ベルリン天使の詩

きもちよく晴れた日があったので散歩に出た。ポケットに鍵とケータイと財布と文庫本を一冊。たんぼの中をシガーロスをききながらとぼとぼ歩いてみたら、あぜ道のつゆくさ、土筆、かわいた犬の糞、土のぬくもり、風のにおい、車に乗っていたときには逃してい…

ワーニャおじさん

岩波文庫、小野理子訳のチェーホフ。ブックオフオンラインで百円。みじかいプロットなので午前中で読み終わってしまった。 静かな田舎屋敷に、退職した教授夫妻がもどってきた。尊大で身勝手な教授と無為に日を送る美貌の妻は、人びとの暮らしに波紋を呼びお…

ラブシーンの言葉

埼玉から持ち込んだ最後の一冊。毎日すこしずつ湯舟に浸かって読んだ。全裸で読むラブシーンの数々。 ポルノ小説、投稿読者手記、ちょっとアヤしい通販カタログ。睦みあうからだとからだが奏でる愛の音楽を、たっぷりつめこんだ官能のことば。はしたなくて、…

素敵な活字中毒者

「活字中毒者の一日」山口瞳/「愛書人行状記」武井武雄/「本を食べる」田辺聖子/「何のために小説を読むか?」石川喬司/「書盗」内田魯庵/「J.J 氏と神田神保町を歩く」植草甚一/「冬眠日記」大岡昇平/「一九七八年(一月〜六月分)」殿山泰司/「行き…

雪屋のロッスさん

埼玉から持ちこんだ本が読み終わりそうなので、ブックオフオンラインで本を買ってみる。実際の店舗とちがって¥105ではなく¥100コーナーが敷設されている。文学・エッセイ・詩集、小説、外国の小説、云々、と、はてよくわからないジャンルに分類され…

新サラリーマン物語

「へこきよめご」という絵本をブックオフでみつけて、筈氏がなつかしがるものだから買った。タイトルでまさかとおもったが、そのまさかなので、新妻のへこきがとんでもない。効果音はずぼぼぼぼかーん、ばさまも猫も米俵も吹き飛ばしてしまういきおい。役に…

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

週末は雨。二週間ぶりで家族が揃う。息子氏は実家がよほどたのしいと見えてちっとも寝ようとしない。蒲団からいそいそと脱走するさまをみて、黒川仏壇店のテレビコマーシャルを思い出す。あれ、ローカルコマーシャルなんだろうな。いつのまにか見なくなった…

はじめてわかる国語

実家の風呂にはアンパンマンの風呂マットが敷いてある。アンパンマンの大きな顔のまわりにちいさく主要キャラクターが描いてあるそれを見て、息子氏が、バタ(バタ子さん)、おじ(ジャムおじさん)としきりに言う。というのは、そのマットにはあかちゃんマ…

文章読本

風が強い。石川にしばらくいたことのある知り合いが、石川では一日のうちにすべての天気が見られるといったそうだが、たしかに昨日は昼前に晴れていたのがだんだんに曇り、雪雷が鳴り出して風がびゅうびゅう、そのうち雨に霙が混じりだし、最後は雪がちらつ…

アンネの日記

ふとしたときに読む本がないというのを考えてみるだけでお尻がむずむず落ちつかないので、どこにいくにも鞄には一冊本をいれておく。会社の机のひきだし、風呂場のわきにも一冊ずつ。実家の本棚は家族各人の本が雑多にあって、指輪物語が文庫でそろっていた…

耳そぎ饅頭

高熱が続いた息子氏であったが六日目の朝にようやく平熱にさがった。念のため義母に子守りをお願いし、朝一番で筈氏に病院へ連れてってもらうことにして出社した。これでやっと産休にはいる。前日のまっしろな景色が嘘のようにあたたかくなるという天気予報…

ひなびたごちそう

いよいよ腹もでっぱって、里帰りする日が近づいてきた。しごとは有給休暇を使い果たしてかりそめの自由を遊ぶつもりが、先週から胃腸炎をやった息子氏がこんどは熱をだし、最終出勤日を一日残すだけになりながらなかなか出社できずにのびのびになっている。…