まみ めも

つむじまがりといわれます

2012-01-01から1年間の記事一覧

火宅の人

こないだ商店街をぶらついとったら、向こうから白髪のばーちゃんが、膝上のスカートにレース編みのソックス、杖をつきつつサンダルをぺたんぺたんやって歩いてくるのに目がいった。随分と派手なばーちゃんだなあと思って眺めていると、顔見知りらしい床屋の…

読書の階段

朝夕は陽射しがずいぶんと傾き、影が多くなって、風も吹く。暑さもやり過ごしやすくなった。夏が終わると予感するのは好きだけれど、本当に夏のしっぽが見えてくると日の短さが惜しくなるのだから、勝手だな。夕方、天気がゆるすときには、セイちゃんを保育…

どこか遠くへ(新・ちくま文学の森)

七月いっぱいぐらいまでは暑さがたまらなく身体にこたえるが、八月にはいるとすっと暑さが軽く感じられる。蝉の鳴き声が耳につき盆休みがはじまるころには、なんだかもう夏が踵を返してあっちを向いているような、そういう風に夏の終わりにたいする嗅覚は年…

杏っ子

盆休みは下田行。飽きるまで温泉に浸かり、サウナにはいり、脱衣場のマッサージ器で全身をぎゅうぎゅうに揉みしだかれ、湯上りのからからに干からびた体につめたいアルカリイオン水をグーっと飲み干すと、胃袋にぐんぐんしみこむのを感じる。いつもは夕方に…

これも男の生きる道

金曜日の夜明けにふと触れたセイちゃんがあつあつになっていて、朝、検温するとはたして熱があった。保育園をやすんでクリニックに連れていくがどんどんと機嫌をわるくし、病院から帰ると奈良美智の絵のこどもの目をしてぐったりした。保冷剤をくるんだ手ぬ…

ふらんす物語

ふらんす物語 (新潮文庫)作者: 永井荷風出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1951/07/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見る四年前、婚前旅行はイタリアで、帰路、フランスでトランスファーした飛行機がとびたったら、眼下のパリでエッフェル塔が…

人間みな病気

三連休は鎌倉にでかけた。一日目の夕方、ロッキングソファで宿六氏に抱かれてうとうとしたセイちゃんのからだがみるみる熱くなり、九度ちかくまで熱があがってしまった。翌朝には平熱に復したが、外は暑熱の夏、大事をとって家ですごすことにした。家は山の…

父小泉信三を語る

朝、セイちゃんを保育園に送り届け、日用品の買い物、夕飯のしたく、天気がよければシーツを洗いふとんをほす。午後はフクちゃんを抱いてソファで本を読んだりうとうとしたりするとあっという間に迎えの時間がくる。そんな定型の毎日を消費している我が家に…

黒いハンカチ

黒いハンカチ (創元推理文庫)作者: 小沼丹出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2003/07/12メディア: 文庫 クリック: 17回この商品を含むブログ (76件) を見る前々から、配偶者のことをなんと書いたものか迷走しており、主人なんてのは癪にさわるし、夫という…

ブキミな人びと

ブキミな人びと (福武文庫)作者: 内田春菊,日本ペンクラブ出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1992/12メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る椎名誠 「真実の焼きうどん」 内田春菊 「すてきなボーナス・デイ」 原田宗典 「駅のドラ…

感情教育

六月の第一土曜日、実家の両親に送ってもらい浦和の自宅に戻ってきた。レンタルのステップワゴンは後部座席にチャイルドシートをふたつ、前向きと後ろ向きにそれぞれ取り付けてあった。フクちゃんは一度のサービスエリア休憩で三度脱糞、三度めには小水の噴…

病の神様

生まれてこのかたおおきな病気や怪我もなく、出産するまでは入院というものもやったことがなかった。ところが妊娠と出産を機にからだというのはこんなに変わるものかとおどろくドラマティックさで勝手がちがってしまった。セイちゃんを妊娠してすぐのころに…

生きることはすごいこと

石川で過ごす週末も最後なので、夫とセイちゃんと三人でドライブ、お昼を済ましたあとで車を海の方角に走らせる。西にいけば海につくだろうと当てずっぽうに道を選んでいくと、そのうち家屋に海辺の風情がしてきて、アスファルトの上を砂利がざらざらしてい…

いつか王子駅で

いつか王子駅で (新潮文庫)作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/08/29メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 40回この商品を含むブログ (164件) を見るかつて西ヶ原に住んでいて、王子駅を過ぎて自転車で二十分くらいのところに通い、家庭教師を…

ただならぬ午睡

ただならぬ午睡 (光文社文庫)作者: 日本ペンクラブ,江國香織出版社/メーカー: 光文社発売日: 2004/05/13メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (18件) を見る『謎』吉行淳之介 『朱験』河野多惠子 『ホテル・ダンディライオン』安西水丸 『十日…

思い出トランプ

思い出トランプ (新潮文庫)作者: 向田邦子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 82回この商品を含むブログ (125件) を見る月曜の朝は、新聞の一面、見出しをみたおかあさんが、日食はなんじ、ときくので、記事の本文に…

千曲川のスケッチ

千曲川のスケッチ (岩波文庫)作者: 島崎藤村出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/02/15メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (7件) を見る井の頭線の車内だったとおもうが、つり革につかまって立ったわたしの斜め前にすわるひとが、一心に…

おすもうさんのおしり

おすもうさんのおしり (福武文庫)作者: 泉麻人,日本ペンクラブ出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1993/01メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログを見るなんたって国技大相撲 東海林さだお 大相撲は国技なり見るなら食うな食うなら見るな 群ようこ…

手紙読本

活字中毒のアンソロジーで読んだ江國滋がよかったので、ブックオフオンラインで検索、在庫があるなかで一番安いのが手紙読本だった。150円。豪華なラインナップで文豪の手紙を読めてしまう一冊。胸をうたれるものから情けないみっともないものまであってとこ…

シチリア!シチリア!

妹が借りてきた映画は四つあり、このシチリア!シチリア!が150分あまりと一番長かった。監督はニュー・シネマ・パラダイスのジュゼッペ・トルナトーレ。ニュー・シネマ・パラダイスは見たはずなんだけれど、キスシーンをつぎはぎしたフィルムのところしかエ…

ペルシャ猫を誰も知らない

西洋文化が規制されるようになったイランで、当局の弾圧の中でも自分の愛する音楽を生み出し演奏する若者たちを描いた青春群像劇。実在するミュージシャンたちが多数出演、無許可でのゲリラ撮影によって、テヘランの今をリアルに映し出した作品。 妹が借りて…

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ

こないだはヘンテコな夢を立て続けで見た。ひとつは、学校かなんだかで帰りに自転車に跨がろうとしたらサドルがぐらぐらになっていて危うい。ひとつは、口もきかないし顔もはっきりしない得体のしれない男の子にめがねを拵えてやる。ひとつは、夜中にバス停…

少年の眼

「めくらやなぎと眠る女」村上春樹/「星の巣」ビートたけし/「日曜日の反逆」灰谷健次郎/「小さな橋で」藤沢周平/「子供の領分」吉行淳之介/「雨のなかの噴水」三島由紀夫/「公園にて」中井英夫/「驟雨」井上靖/「トカチン、カラチン」稲見一良/「…

君は大丈夫か

産後は文字を読んではいけないと、いうが、ねむるのが下手で寝ようねようとするのがかえってストレスになって眠れない。だから、なんとなくねむたくなりそうな本を入院用にえらんだのを、ピンクのベッドに寝そべりながら読んでみる。君は大丈夫かというタイ…

せきれい

入院の荷物に、本を三冊いれた。そのうちの一冊は読みさしの庄野潤三。前期破水をやって明け方に入院したときには陣痛はあるようなないような、十分おきにあるかとおもうと一時間こなかったり、ずいぶんと気まぐれなもんだった。朝になって母親がいったん帰…

桃尻娘

冬のボーナスがでたときに、思い切って久生十蘭全集のひとつめを買った。とても持ち歩けるような代物でなく、なかなかページをめくれないでいるが、急いで読んだところで忘れてしまうのだから苦にもならない。全集の月報に橋本治が寄稿していて、桃尻娘とい…

父、帰る

三時半に目が覚めてトイレにいったら、破水した。パジャマを濡らしたままで階上に寝る母を電話で起こし、浦和の筈氏に電話をし、産婦人科に電話をし、着替えを済まし、荷造りをし、ねむっている息子を父にまかし、して、表にでたら、北斗七星が目のまえにあ…

第三の男

予定日を過ぎたが気配があるやらないやらよくわからないでいる。歩いたほうがお腹によかろうと考えて、きのうは一時間そこらを歩きまわる。家の裏は田んぼがひろがって、その中を桜並木の遊歩道が続いている。どこまであるだろうと端まで歩いて帰ってきたら…

真夜中のカーボーイ

お医者から出産秒読みを告げられた週末、三週間ぶりで筈氏が来た。前回の妊娠期間からかんがえると、すわ出産かという気運も高まったが、うまれなかった。土曜は航空プラザで飛行機をながめ、日曜は動物園にでかけた。息子氏はゴリラをみたかったらしいが、…

タクシードライバー

月曜日、朝はひんやりと空気が冴えていたが、表にでると随分あたたかい。昼のニュースでちかくに熊が出没しているといっていた。夕方、保育園あがりの息子氏をのせてさくらを見に出かける。通っていた高校のそばを通ると、川の護岸工事で風景がさま変わり、…