まみ めも

つむじまがりといわれます

2018-01-01から1年間の記事一覧

なくしてしまった魔法の時間

夜更けはくるったような雨と風で、あちこちでなにかが飛び、倒れる気配がして浅い眠りだった。朝早く家を出ると往来にはいろんなものが転がって、金木犀の小花柄が地面に濃淡をつくっていたり、あおいままの銀杏の葉が散り敷いている。駅についてみたら電車…

ラモーナとおとうさん

いつも使っている図書館が工事で春まで休館。駅の向こう側にある図書館に通うことにした。図書館ついでにふだん歩かない通りをぶらぶらした。駅前の通りをしばらくまっすぐいった左手に小さな骨董と器の店があって、うすぐらい店内をのぞくと、焼き物が並ん…

中島敦(ちくま日本文学12)

38年あまりの人生でかつてないほどメイク熱があがっているわけは、松井力のYouTube動画と@yesyesyoungのツイッターに感化されているからなのだけれど、資生堂のカウンターコスメよりもキャンメイクのプチプラコスメにときめいてしまうのはやっぱり身の丈の問…

KAWADE道の手帖 中島敦 生誕100年、永遠に越境する文学

通勤の途中にあるちょっと時代感のある自動販売機に、山ぶどうサイダーという缶入りのジュースが売っていて、100円、ずっと気になっていた。ついに機が熟した、いまだ、というタイミングがあり、百円玉を握りしめてにじり寄ったら山ぶどうサイダーだけに売切…

オカン、おふくろ、お母さん

連休にめずらしくレジャーにでかけたところ、ふーたんが階段から転げ落ちてしまった。しばらく様子をみていたけれどちょっと体勢が変わると痛がり、左腕をかばうので、やっぱり心配になって夜間救急にかかった。肩の脱臼や腕の骨折を疑ったけれど、たまたま…

Love Letter

ひそかに動向を伺っていたきのこたけのこ総選挙の結果が出て、毎度ながらたけのこが勝った。政治や宗教の話はタブーとはよくいうことだけれど、おそれず立場を明らかにすると、断然にきのこ党派ということになる。いつだって少数派。会社にはいりたてのころ…

猫はしっぽでしゃべる

帰り道でガレージの軒先に「ご自由に お持ち下さい」と黒のマジックで書かれたうす汚れた段ボール箱がおいてあって、中に名状しがたいセンスのおもちゃが詰まっている。それをみつけたセイちゃんが、いいものがあるよと目をきらきらさせて、こどもたち、三人…

秘密と友情

嵐の日は、雨がひどくなる前に風の吹く中を帰ってきた。夜のふとんで、雨と風の音、往来をなにかが転がっていく気配が眠りのなかに混じってくる。レム睡眠のないマウスのことを考える。夢をみないマウスは物覚えが悪いけれど生きるのには問題がない由。iPhon…

知識人99人の死に方

パッとしない天気の週末。焼き菓子が食べたくなって電車でふた駅のアングランパに行き、ガトーバスクをふたつ買った。デパートにはほしいものが見つからない、金木書店にいく。三島由紀夫の豊饒の海四冊がビニール紐で括られて千円なので買って帰る。四冊ぶ…

タマリンドの木

週末のラジオからさよなら夏の日がきこえて、今朝は八月は夢花火、あとはただ貴方に会いたくなるので夏に引導が渡される。夏の暑さはどんどん度を過ごしていくけれど、そこから秋に向かうときのベクトルだけは普遍なのだと思う。いつだって秋口の歌声は澄み…

奇界遺産

きのうは会社を出たところで大粒の雨がぼたぼたおちてきて、そのうち雷がものすごくなり、稲妻がビートのようにびかびか落ちる西の空が迫ってくるのをながめながら、泣く子の手を引いていそいそ帰宅した。夕飯はチキンライスに目玉焼きをのせたが、凄まじい…

きのこ文学名作選

首のリンパがこりこりしたり、どでかいおできが生えたり、口角炎、ビールのおいしさが完璧さを失い、調子がいけないと思っていたら、週末から熱がでた。背中のスイッチの話をしていたのは誰だったか忘れてしまったけれど、本当にスイッチがぷちんとオフにな…

見えるものと観えないもの

この夏にきいた話で一番印象が深かったのは、大学の後輩が仕事から帰ったら妻子が荷物とともにさっぱりいなくなっていたというもの。彼自身の身に覚えがあるとしたら、その前日、風邪をひいた娘さんにうどんを鍋から食べさせていたのを、「せめてお椀にうつ…

世界音痴

ひっそりと帰省中。朝は起き抜けに車に乗り込み病院にむかい、夕方に帰宅していぬの散歩と夕ごはん、風呂をすませ、こどもたちと寝る。夕ごはんは、牛丼をつくったり、冷や飯の炒飯、なすとひき肉の味噌いため、ししとうと豚肉の塩炒め、そうめんとなすの煮…

猫は音楽を奏でる

先週、おひとりさまの水曜日は台風が近づいて三時に帰るよういわれた。躊躇せずタイムカードを切り、帰宅困難者を出したくない社の意向を忖度し、最寄駅についたあとは自由を謳歌することにした。向かうはブックオフ。 タマリンドの木 池澤夏樹 知識人99人の…

アムステルダムの犬

あごにおできができたのを、いじくり倒して育ててしまい、きのこでもはえてきそうなでかいしこりになっている。針でつついたり、押しつぶしてみたけれど、なかなか根が深いようで思いきれずかえって刺激してでかくしてしまった。ぶよぶよとはせず、かたくし…

たべもの九十九

家族と夏休みが合わず、ひとりで仕事にはげむウイーク。友だちがすくないので、ほとんど一択の彼女に声をかけて、きのうの夜はつきあってもらった。出張帰りのガラガラを引っぱりながらまちに繰り出す。iPhoneの地図がまったく違うところを指し示すので、ま…

湖畔の愛

この夏はじめてのスイカバーをかじる。季節感の乏しいなりにじぶん歳時記があって、スイカバーをやらないことには夏を閉じられない。あとはやっぱりがんがんの暑さの中でサマーソルジャーだけは聴く。それは天気のせいさだし、それから先はヘイヘイヘイだし…

中島敦―父から子への南洋だより

そうめんがおいしい。茄子をくたくたに煮て、冷やしておき、蒸し鶏を作ってそれも冷やしておき、薬味はねぎと大葉を刻んで、チューブのしょうがをしぼり入れてつるつる食べる。高山なおみがチューブのしょうがは墨汁のにおいがするといっていたけれど、わた…

いのちのかたち

さるすべりが散っている。暑いので窓を閉めてクーラーをいれている。その窓の向こうをななめにひらひらと明るい花が落ちていくとものすごくあちら側の感じが濃い。さるすべりだけがまぶしく咲く盛夏はわりと好きだったりする。 土曜は台風でざんざん降りの中…

ゆうかんな女の子ラモーナ

水曜がどこかにいってしまい、水曜には木曜の気分がし、木曜には金曜のつもりになり、ほんとうの金曜がやってきてやっと帳尻が合ったような気がした。金曜のお弁当はピーマンとコーンとウインナー入りのカレーチャーハンとチーズをまぜた甘い卵焼き。S&Bの赤…

絶望図書館

暑さのせいかやたらとねむく、きのうはこどもたちと一緒に九時過ぎに寝てしまった。十時ごろに、ドーっというすごい雨の音で目が覚めたけれども、そのまままたねむり、五時まで。きょうはごはんを炊いて、のりのつくだ煮のごはんをお弁当に詰め、ウインナー…

洋食ウキウキ

先週から夏休みがはじまり、5時起きしてお弁当をこさえる日々。人参のソテーと枝豆と玉子焼きをレギュラーにして、あとはそばめしにウインナーを焼いたり、切り昆布の煮物をいれたり、麻婆豆腐にしたり。人参のソテーは、味つけもしないでオリーブオイルでじ…

現実入門 ほんとにみんなこんなことを?

連休はフーちゃんとふたりでお見舞いにいった。家族というのはほんとうに不思議なバランスで成り立っているもので、誰ともわかりあえてはいないけれど、みんなの気持ちに寄り添いたく、わたしは誰のことも否定できない。やれることがなさすぎて、モンブラン…

アヒルと鴨のコインロッカー

きゅうり、しおれてしまった。茶色になった葉を落としたら、二枚しか葉が残らなかった。それでもひょろひょろと伸びた茎の先からあたらしい緑が出てくる。米のとぎ汁を注いでやる。元気出しておくれ。トマトが一番威勢がいい。ピーマンはやっと一個そだって…

プラネタリウムのふたご

七夕、ふーたん三歳のお誕生日。朝からいろいろとこしらえ、夜は、フライドポテトとおこのみやき。ふーたんは「おこのみやき」がいえなくて「おともだち」という。なにがたべたいんだっけ、おともだち、本当はなんだっけ、ままおしえて、おこのみやきだよ、…

うさぎのミミリー

梅雨明けの週末に初蝉をきく。 日曜はのびのびになっていたセイちゃんのお誕生会。朝からクーラーをつけて汗だくで料理。じゃがいもとウインナーのスペインふうオムレツ、トマトソースのペンネ、チキンカレー、えだ豆。あとは桃缶をたっぷり使ったビスケット…

村上春樹全作品 1990-2000 第3巻 短編集II

髪をきったのは、本当のことをいうと、おとうさんが短い髪をほめてくれるからで、そういえば、わたしが親に一番ほめられたのはショートカットが似合うということかもしれない。これから先、もうずっとショートカットでいたいなという気持ち。洋服のことを考…

君がいない夜のごはん

わたし史上最高の忙しさがやってきており、どれだけこなしても仕事が次々とわいてくる。こなせばこなすほどわけがわからなくなる。帰ってごはんとおふろと寝かしつけを済ませてから、気持ちをおちつけるようにお絵かき帳に一枚分の手紙を書く。できるだけな…

知らない町角

水曜の夜からフーちゃんが熱を出して難儀したけれど、金曜の夕方にかがやきに乗って実家に帰ってきた。いま時季の水田のまぶしさ。お見舞いを繰り返し、なにをするでもない時間を共有する。目があったときに、目の中に光があるので大丈夫という気持ちになる…